スンスクの春恋(スンスク) 39
空は青空から暗い色に代わり、池の方から吹いて来る風は肌寒く感じた。
「私ね、この空の色がスンスクと結婚を決める前の時は嫌いだった。」
哀しそうな顔をして、空を見上げるミラの目は潤んでいた。
泣いているのだろうか、水面の揺めきと同じようにユラユラとしている。
「あの時は、スンスクも知っていると思うから話すけど、前の彼と婚約中だった。病気が分かって彼に伝えた時、私を見る目があからさまに嫌そうな目だった。彼にとって、私はただ優越感を得るための道具。家柄だって良い訳でもなく、結婚して家庭に収まったらきっと形だけの夫婦になるって、判っていたわ。それでも、私は彼の家柄と外見だけしか見ていなかったから・・・・・彼みたいに素敵な人が、私と結婚をしてくれるのだから、我慢しなきゃって。」
初めて聞いた。
ミラの僕との結婚前の考えていた事を・・・・・
僕はあの先生の元婚約者に比べられると、卑屈になってしまいそうだ。
あの人は大人で背も高くてカッコよくて流行りの服装で・・・・・・でも一番追い越せないのは、あの人は僕よりも年上だと言う事。
「でもね・・・・・・」
ミラは潤んだ瞳でスンスクの顔を見つめた。
「私、無理をするのを止めたの。 恥ずかしがり屋のスンスクが毎日女性病棟に来てくれるのを、気が付いたら待っていたの。少しでも遅いと気になって・・・・・・・・初めて言うけどね・・・・・・エレベーターホールまで行こうと思って・・・・・看護師さんに叱られたの。」
いたずらっ子のように、笑って舌をペロッと出した。
その表情は、いつまで経っても高校生の女の子のような母と似ていた。
「スンスクはいい子だった・・・」
「今は?いい子じゃないんですか?」
「ほら!また敬語に戻ってる・・・・・」
顔を赤くして額に汗を掻いているミラの額を、ハンカチでスンスクは拭いた。
「いい子じゃないよ・・・・毎晩毎晩・・・・・・スンスクは私を大切にしてくれているから・・・・・・・」
ミラはスンスクを抱きしめて耳元で囁いた。
「顔を見ないで聞いて・・・・・」
スンスクの首に顔をうずめて、静かに話し始めた。
「結構前からスンスクの事は好きだったよ。私のヘタな授業をみんなは野次を言ったりからかったりしていたのに、スンスクだけは黙ってノートを取って、一生懸命に聞いてくれたからすごく嬉しかった。スンスクが授業を聞いてくれているから、毎日家で遅くまで授業プランを考えて・・・・スンスクの為にだけ準備をしたみたい。ありがとう・・・・・・・・」
ポツンと雫が落ちたような気がした。
「だから、スンスクと一緒に教壇に立てなくてもいいの。スンスクが授業を聞いてくれたからそれが私にとって一番いい思い出になるの。ありがとう・・・・・・・・」
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