スンスクの春恋(スンスク) 40
「どこかでご飯を食べて行こうか?」
「ミラが疲れていないのなら・・・・・・・」
「スンスクが一緒にいるから疲れないわ。パラン高校の近くにあるレストランなんだけど・・・・・・ほら・・確かスンスクが謝恩会で使ったレストラン。」
「レンガ造りのレストラン?」
1楽しそうに話しているミラはとても生き生きとして、こんな風にしているともしかしたら病気も治るんじゃないかと思った。
「伝説って・・・どんな伝説?そう言った女の子の好きそうな話には疎くて・・・・・・」
「ふふ・・・私は結婚しているけど・・・30年以上前にそこで高校の謝恩会をした卒業生が結婚して幸せになったって・・・・・・同時期じゃないけど、私も謝恩会でそこのレストランを使ったし、スンスクもそこでやったでしょ?」
「まぁ・・・・・・」
「伝説だとは分かっているけど、普通の女の子が自分も好きな人と一緒に記念に行ってみたりする事をしてみたいなってそう思ったの。」
スンスクは気になった事があった。
黙っていると、心配そうにミラが聞いて来た。
「どうかしたの?」
「別に・・・・・・行こうか、レストランに。」
「彼の事を気にしているんでしょ・・・・・・・・」
ミラの悲しい声がスンスクの心に響いた。
「気にしていない・・・・・・・気にして・・・・」
「彼とは行っていないわ。彼は高級なレストランやホテルのレストランやラウンジが好きだったから。行くのはスンスクが初めてよ。」
分かってはいたが、自分と結婚する事を決めるまでは、ミラは別の人と婚約をしていた。
相手は大人で自分は子供。
それはいつになっても追いつかない距離。
ミラの指定席になっているスンスクの車の助手席。
自分以外が車に乗ったのは愛する妻のミラだけ。
ヘッドライトが点いた車の数が増えてきた。
何十年も続くこのレストランでの伝説が広まり、パラン高校に入学をすると夕方の店の前が行列になる時もあった。
順番に店内に案内されると、舞台正面の席は記念写真を撮る人が今日も何名かいた。
「ペク教授のお坊ちゃま。」
声を掛けられてスンスクは振り返ると、支配人がニコニコと笑っていた。
「ご結婚されたそうで・・・・おめでとうございます。先日教授がいらっしゃいましてお聞きしました。先ほど姿をお見かけしたのですが、手を離せなくて。どうぞいつもの席にご案内いたします。」
訳が分からないと言った顔をしたミラにスンスクは笑顔を向けた。
「多分ミラの言う伝説のカップルは、僕の両親ですよ。それに、何かあるたびに両親は来るんですよ、このレストランに。」
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