スンスクの春恋(スンスク) 48
新しい命の誕生は、スンスクとミラの二人だけでなくペク家とミラの実家のホン家にとって明るい話題でもあるが、その事でミラの病気の進行が速くなるという不安はあった。
それでも、若い二人は毎日が楽しそうで、周囲はこれで良かったと思っていた。
ミラも一日でも長く今の状況が続くようにと、家事をグミとミアと一緒に行っていた。
「ミラちゃんもハニちゃんとよく似て、洗濯物を畳むのが上手ね。」
グミはミラの手元を見ながら、ほほえましい表情でミラを見ていた。
「料理は出来ない、掃除は危なっかしい、勉強は出来ない・・・・・それだけじゃいけないからって、小さいころから家族の衣類を畳んでいたんです。」
ミラは、グミに手元を見られて恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ツワリはまだ大丈夫?」
「ええ・・・でも貧血が酷くて、朝が起きられなくて・・・・・・・」
「いいわよ。朝の支度はミアちゃんもいるし・・・・ハニちゃんも日勤や休みの時は手伝ってくれるから。」
「明日ですよね、お兄さんの結婚式。」
「そうね・・・・・スンリはスンスクと違って、よくソラと喧嘩をして別れただのよりを戻したのと・・・・・・何度もハニちゃんがハラハラしているのを見たわ。それがやっと明日結婚式を迎える事になって。」
スンリは一人っ子のソラの両親と同居する事になっていた。
特に騒ぐ性質(たち)ではないが、人が一人家にいないと寂しく感じる。
「ミラもちゃんとした結婚式をしたいわよね。」
「おばあさん・・・・私は・・・そんないいんです。」
「そう?女の子の夢は好きな人と並んでウエディングドレスを着る事じゃない。スンスクなバカが付くほど義理堅いし気を使う子だから、兄より先に結婚する事を気にしていたのよね。」
「すみません・・・・・」
「でも、スンスクはきっとミラにいい思い出を考えてくれると思うわ。」
グミはハニからそれとなく聞いていた。
二人の指輪交換の式の時に、ミラの母親と何か約束をしていた事を。
「お母さん、ミラ・・・休憩にしましょうか?」
ミアはミラの好きな温かいミルクを置いて、いただきものの焼き菓子を出した。
「ここの焼き菓子は美味しいのよね。」
グミは一枚口に入れて、次にミラに勧めた。
「私も好きなんです、よくスンスクが入院中に買って来てくれたんです。」
「そう?スンスクが好きなお菓子なのよ。沢山食べてね。」
ミラはその焼き菓子を口に頬張ると、急に吐き気が込み上げた。
「吐きそうなの?ミアちゃん、何か容器を持って来て、ミラが吐きそうみたい。」
ツワリはないと思っていたが、苦しそうに吐くミラの背をグミは優しく擦った。
「すみません・・・・・汚い事をしてしまって。」
「いいのよ。妊婦さんは誰でも体験する事だから。赤ちゃんがミラのお腹にいると言う証拠ね。」
出来る限り我慢しようとしているが、焼き菓子だけでなく大好きな温かいミルクも喉に通らなかった。
「明日が結婚式なのに・・・・お義兄さんとソラさんに迷惑をかけてしまうかもしれない。」
心配そうにしているミラにグミは安心させるように両手で華奢な手を包み込んだ。
「大丈夫よ。明日の結婚式にはスンジョもスンハもいるし、ハニちゃんだっているわ。具合が悪くなっても対処してくれるだろうから。ミラは気にしなくてもいいから行きましょうね?ペク家のもう一人の花嫁を披露しないと。」
結婚式を挙げていないミラを出席させるのは可哀想だと思っていたが、ミラとスンスクの為にも、グミだけじゃなくペク家のスンジョとハニ、ホン家のミラの両親が楽しみに待っている事があった。
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