スンスクの春恋(スンスク) 53
グミが用意したドレスを着て、ミラは迎えに来たタクシーにスンスクと一緒に乗り込んだ。
「オンマ、私はインスンとインハと後から行くから・・・・・・・・」
「分かっているわ。壊さないように持って来てね。」
「オンマじゃないから心配しないで。」
タクシーのドアが閉まると、スンハは大きく手を振った。
「さぁ、家に入って部屋から取って来なきゃ・・・・あなたも元気だからあまりお腹を蹴らないでね。結婚式に臨月間近の妊婦が大変な事を起こした事があるんだから。」
7年前にスンハは結婚式の披露宴の最中に陣痛が始まり、母ハニと時間差はあるがほぼ同時に出産をした経験がある。
前日のパク先生の診察では、大丈夫だと言われているのと自分でも今回は大丈夫だと分かっているが、それでも何が起きるか分からないのがペク家絡みの結婚式。
「うんうん、さすがグミおばあちゃんだわ。無理を言って作ってもらったけど、いい出来栄え。」
スンハはそれをグルッと廻して、細部まで感心して見ていた。
「オンマ、アッパと来たよ。」
「インハ、すぐに行くわ。」
ガサガサとケースに仕舞い、外から見えないように大きなバックに入れて、実家での自分の部屋からリビングで待っている息子のインスンと、スンリが挙げる式場に向かった。
ハニとスンスクとミラの乗ったタクシーは、高級ホテルの車寄せに停まった。
財閥同士の結婚式という事で、マスコミや招待客で賑わっていた。
スンリは財閥の子息と言っても、ハンダイは叔父のウンジョが跡を継いでいたが、父がパラン大医学部の教授という肩書があるから、病院関係の招待客も多数いた。
「凄い人ね・・・・・」
その人の多さにミラは驚いていたが、スンスクはいつもと変わらない様子でタクシーから車椅子を出した。
「凄いよねたしかに・・・私も結婚した時は、ハンダイの会社関係だけでも驚いたけど、跡を継がなかったペク・スンジョの息子だけど会社関係も招待しないとね。ソラちゃんはオリエントコーポレーションの後継者だし、沢山の人がお祝いに来てくれてよかったわ。」
ハニも結婚して30年以上経つが、この会社関係の人と達との交流はいまだに馴染めなかった。
スンジョも後継者ではないからと、会社関係のパーティーには参加する事を渋っていたが、今日は息子の結婚式だから一応笑顔で挨拶をしていた。
「ミラ、あの人がソラちゃんのお母さんよ。」
相変らずヘラは華やかで、並んで立っているスンジョとお似合いだと今でもハニはそう思ってしまう。
「綺麗な人ですね、ソラちゃんのお母さんは。」
「・・・・・・・・・」
まだハニは昔の事が気になってしまい、胸が苦しくなって来る。
「お義父さんと並ぶと俳優みたいですね。」
「ミラ、体調が悪かったら言うんだよ。」
スンスクは父と母の過去をスンリから聞いて知っている。
母が悲しい顔をするのはペク家の男子たちは一番気にしてしまう。
「ハニ!そちらのお嬢さんは?」
ヘラはハニとスンスクと車椅子に乗っているミラを見つけて近づいて来た。
「スンスクのお嫁さんなの。」
「そう・・このお嬢さんが・・・・楽しみね。」
ヘラも式の後の事を知っている。
知らないのはスンスクとミラだけ。
「スンスク、おめでとう。スンリよりも早く結婚するとは思わなかったわ。」
「いえ・・・・今日は良い天気で・・・・おめでとうございます。」
恥ずかしがり屋のスンスクは、父とどこか似ているヘラがちょっと苦手だった。
ヘラの心を見透かすような視線を逸らして、ミラの車椅子を押して親族の控室に向かった。
「ハニ、スンジョを返すわね。」
ヘラはそう言うと、離れた所で招待客に挨拶をしている夫ギョンスの方へ向かった。
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