あなたに逢いたくて 4

「パパ、早かったのね。お兄ちゃんがハニちゃんと・・・・・」
「ママ、お茶を持って来てくれるかな?ハニちゃん、悪いけど席を外してくれないか・・・・ウンジョもハニちゃんと一緒に二階に行ってなさい。」
スチャンはスンジョの向かい側に座って、深呼吸をして気持ちを落ち着かせるように目を瞑ってからゆっくりと話し始めた。

「スンジョ・・・・今日、会社にパラン大学医学部の教授から電話があったが、理工学部から医学部に変わったんだって?」
「ああ・・医者になろうと思って三年から編入しました。」
スチャンは拳を膝の上で握りしめて、冷静に話そうと出来る限り怒りを抑えているようだった。
「どうして・・・・・・どうして、進路について一言も親に相談をしなかったんだ。ワシは・・・・・ハンダイの跡を継ぐのはスンジョ、お前にと思っていたんだ・・・・医者になるって?会社はどうするんだ・・・えっ?」
「昔のオレだったら何も考えずに、親父の跡を継ぐと決めていました。だけど人に言われて気が付いたのです・・・・オレの夢ってなんだろう。何の苦労もしないでいいのか・・・・・・親父やハニのお父さんのように、苦労して達成感を味わえるようなそんな仕事がしたい。感動することも努力することも知らないまま21年間生活していたけれど、努力してもっともっと自分が生きていると言う事を確かめられる仕事をしたいんだ。」
グミがお茶を並べながら心配そうにスンジョに問いかけるように話した。
「スンジョ・・・・親はね、自分が苦労しても子供にはそんな苦労を味あわせたくないのよ。でもね、親が作ったレールをさらに延長していくのも楽な道ではないのよ。」

スンジョは意志が固そうに表情も変えずにはっきりと言い切った。
「興味がないんだ・・・・・おやじの会社に。」
<パシッ!!>
スンジョの白い頬に赤い跡が付いた。

スチャンは顔を真っ赤にしてワナワナと震えて、その目には涙が滲んでいた。
「興味がない?・・・・・・・わしはそんな会社を・・・・信頼しているお前が興味を持たないような会社をやって来たんじゃない・・・・・・自慢の息子のお前に・・・スンジョに・・・会社を継いでほしかったんだ・・・・・・」
「すみません・・・・親父・・・オレは医者になりたい。初めて自分のやりたい事を見つけたんだ・・・・たとえどんな苦労をしてもやり遂げたいんだ・・・・・・」
「・・・ス・・スンジョ・・・・・・・うっ・・・・・・」
スチャンはシャツの胸を掴み、苦しそう声を出してその場に倒れた。
「親父!!」
「きゃぁー!!!パパ!!」

二階から階下の険悪な状況を心配そうに伺っていたハニとウンジョは、スンジョの声とグミの叫び声で大変なことが、下のスチャンの書斎で起きたことを知り、急いで階段を降りて行った。
「ハニ!救急車を・・・・・・」

私はスンジョ君に言われて救急車を呼んだ。
倒れたおじさんに寄り添って震えているおばさんと、おじさんの衣類を緩めて脈を取っているスンジョ君を見ながら、震える手で受話器を元に戻した。
ハニは足をガクガクとさせながら急いで外に行き、救急車が呼んだ家が判るように、門の前で待っていた。
ウンジョ君も怖いんだ。

外に出た私について来て手を握っている。

青い顔をして唇を噛み、救急車が到着するのを震えながら待っている。
「ハニ・・・・・・パパ・・・死んじゃうの?怖い・・・・・怖いよ・・・・・」
まだ幼い小学生のウンジョ君の肩を抱きながら背中優しくトントンと叩いた。
「大丈夫・・・大丈夫。スンジョ君が付いているから・・・・何もかも、大丈夫。」
私の大丈夫は、おじさんの事だけでなく、スンジョ君の夢も絶対に叶うと信じていたかったからそう思いたかっただけ。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

0コメント

  • 1000 / 1000