あなたに逢いたくて 5
救急車が到着をして、救急隊によって担架で運ばれているおじさんは苦しそうで、いつもニコニコと笑って私たちを見ていてくれたおじさんではなかった。
おばさんも初めて見るくらいに取り乱していた。
パパが死んじゃうと言って、震えるウンジョ君の手をしっかりと握っていても、私も怖くてガクガクとしている身体の震えは止まらなかった。
こんな時はどうしたらいいのか、何をしたらいいのか判らない。
「ウンジョと家を頼む。」
スンジョ君はそう言って救急車が走り出すと直ぐに車で追いかけて行った。
「ウンジョ君・・・・・ご飯食べない?」
「うん・・・・・・・食べたくないな・・・・・・」
私だって食べられない・・・・・・おじさんが心配で・・・・・
でも、スンジョ君に頼まれたから・・・・
<ウンジョと家を頼む>って
「ウンジョ君が食べないと、おじさんが帰って来たときに、元気のない顔ではなくていつもの元気なウンジョ君の顔で出迎えなきゃ。」
ウンジョは頷いて食べ始めた。
いつも明るいはおばさんの楽しそうな声が聞けないと、家の中はこんなに静かだったんだ。
ウンジョ君・・・・・涙流していつの間にか疲れて寝ちゃったね。
こんなに小さいんだもの、苦しそうにしていたおじさんに何かあったらどうしたらいいのか判らないから心配だよね。
私はママが亡くなった時は4歳だったけど、いくつになっても両親が揃ってそばにいてほしいよね。
いつの間にかハニも転寝をしていたのか、物音がしてテレビラックの上に置かれている時計を見ると11時になっていた。
スチャンが病院に運ばれてから10時間時間が経っていた。
リビングのドアが静かに開いて、疲れた顔のスンジョが入ってきた。
「ただいま。ウンジョ眠ったのか・・・・・・・」
「おじさんは・・・・・・どう?」
スンジョはソファーで眠ってしまったウンジョを抱き上げて、二階に上がる階段に向かった。
「ウンジョを寝かせてくるから、ちょっと話は待っていて。」
スンジョは二回から降りて来ると、ダイニングの椅子に腰かけて深いため息を吐いた。その目は思いつめているように、何処か遠くを見ている。
何か言いたそうで、でも何から話していいのか考えながらまた大きくため息を吐いた。
「ハニ・・・・・・」
スンジョの凄く哀しそうな声にハニはビクッとした。
「コ・・・・・・・・コーヒー飲む?」
「ああ・・・・・」
コーヒーの雫が静かに落ちている音が、静まり返ったダイニングの空間にやたらと大きく感じる。
マグカップに入れたコーヒーをスンジョの前に置くと、ハニがカップから手を放す瞬間にスンジョの大きな手がハニの手に重ねた。
「親父・・・・・・暫く入院になった。心臓の具合があまり良くない。ストレスと疲労からくるのが一番の原因だ。まだ検査結果が出ていないから判らないが、狭心症の疑いがあるそうだ。」
いつも自信ありげなスンジョの温かい手が、今日は冷たくて小刻みに震えていた。
「親が目の前で倒れるのを見るのはすごく怖かった。そんな年齢なんだよな親父は・・・・・・・社会的責任、家族を守る責任・・・・・会社が今大変だと、今まで仕事の事は一言も家では言わなかった・・・・・今日、ソン秘書に連絡を入れたら直ぐに病院に駆けつけてくれた。今、会社が新作の開発で大変な時期で、親父・・・・・・・資金繰りのために毎日融資先に援助を頼むために廻っていたんだ・・・・・・オレに会社を継がせるために何とかしても立て直そうと必死だった。」
「おじさんの会社、大きいのにそんなに危なかったの?」
会社の事とか、経営とか・・私には全然象像が付かなくて判らないから、スンジョ君が話しをしてくれても何も応えてあげる事が出来ない。
「まぁ・・・・経営状況が良いとか悪いとかじゃなくて、新作が出る時は開発費や新作を製作するための資金や宣伝費とか金に糸目を付けられないから、いつも資金融資で走るのは普通の事なんだ。」
「ふぅ~ん。」
「特に主要は最近はゲームだから、他の会社にゲーム制作の権利を取られないように、開発した人に高額の契約金を払ったり、新作発表の回転も速いから・・・・」
広いスンジョの背中が悲しそうで淋しそうで、ハニは守ってあげたくなり思わず後ろから母親が子供を守るように抱きしめた。
「泣いていいんだよ、スンジョ君・・・・弱音を吐いてもいいんだよ・・私聞いてあげるから・・・・・・」
スンジョはハニのほっそりした手にキスをした。
「オレ・・・・・・・大学を休学して、親父が復帰できるようになるまで会社に行くよ。」
スンジョの淋しそうな声がダイニングに静かに響いた。
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