スンスクの春恋(スンスク) 55
「驚いた?」
「お義母さんに母さん・・・・どうして・・・・」
「スンスクのお母さんに頼まれてね・・・・・・兄より先に結婚式を挙げるのは・・と二人が言っていたけど、女の子の夢は好きな人とちゃんと結婚式を挙げる事だからって・・・ね。」
ミラの母とハニはお互いの子供たちに内緒で計画を立て、日が近づいた時には二人以外の家族に協力をして貰っていた。
「諦めていたの・・・・スンスクと一緒にいられるだけでいいと思っていたけど、お義兄さんの婚約者のソラさんの話を聞いたり、届いたドレスを見たら羨ましくて・・・・・・・・・」
「ゴメンねミラ・・・・僕が気が付かなくて。」
違う違うと言うように、何度もミラは首を横に振った。
「ミラ、こっちに来て。」
ベッドルームのドアが開いて、スンミとグミが手招きをしていた。
「お化粧はスンミが上手なのよ。舞台に立つ事が多かったからお化粧はお任せなの。着付けとヘアセットは私とハニちゃんに任せてね。ほらスンスクはブートニアを付けて。」
ミラが持つブーケから一輪取って、グミはスンスクのジャケットの左の襟に取り付けた。
ベッドルームのドアが閉められると、取り残された感じのするスンスクは、ポツンと訳も分からないと言う表情をしたまま立ち尽くしていた。
「スンスク、ミラを大切にしてくれてありがとう。」
「いえ・・・・・僕は世間の事は何も知らなくて、ミラの事をいつも見ているつもりだったのに、結婚式も挙げてあげられなくて・・・・・どうもそう言う気の使いが出来なくて、お義母さんにも迷惑をかけて・・・・」
「何年生きていられるのか判らない娘ですけど、どうか最期まで一緒にいてやってください。子供を残してしまう事になるのがどんなにミラも辛いのか・・・・・・・」
義理の親子だがお互い遠慮していた部分が、この短い時間に少し距離が縮まった気がする。
笑い声が聞こえるベッドルームの方はとても楽しそうに聞こえる。
ドアを開けてスンスクもそこの中に入りたい気持ちもあるが、ミラの母と一緒にスンリ達の披露宴会場の前で待つ事にした。
「このドレス・・・・・・・」
「そうよぉ~ミラのだったのよ。ソラのドレスと似ているようだけど、よく見れば違うでしょ?」
家族だけで行った指輪の交換の時に、スンスクがくれたストックの花のモチーフがいつの間にか取り付けられていた。
「これはね、私がチュチュをお願いしている人に作ってもらったの。恥ずかしがり屋のスンスクが、お花屋さんに入って手持ちのお金を全部使ってまで買ったお花だし、今の二人の為にある花言葉でしょ?<永遠に続く愛の絆>・・・・意外とね、スンスクって女の子が好きそうな本も読んでいるのよ。別に変な趣味じゃなくて・・・ミラ・・・出来るだけ瞬きしないでね、ラインが滲んじゃうから・・・そうそう、スンスクが女の子の読む本まで読むのは、年子でいつも私と一緒にいたからなの・・・・幸せになってね・・・・・私の代わりに・・・・・・・」
最後の一言はスンミにとって本心からの言葉だ。
「スンミだってお年頃なんだから、素敵な人と結婚しないと・・・・ね?ハニちゃん。」
「本当よ、スンミの頃にはオンマはアッパに片想いしていたけどその次の年には結婚したんだよ。」
「そうだね・・・・・・・・女子大じゃ出会いもないし、バレエ教室と病院ばかりだから・・・・・私は結婚は出来ないわ。」
スンミの悲しい顔を知っているのはミラだけ。
グミもハニもミラのメイクをしているスンミの顔の表情までは気が付かない。
「自分でそう言っても、素敵な男性(ひと)と縁があってスンミが結婚する時はスンジョはどうするかしらね。ハニちゃんに似ているから、赤ちゃんの時からすごく可愛がっていたものね。」
グミとハニがスンミの結婚の話をしている間、唇をかんでミラの顔にメイクをし終えた。
「オンマ、出来たわ。急いで会場に行かないと、そろそろお兄ちゃんとソラさんも待っているわ。」
立ち上がりながらスンミが目頭を押さえた事にミラは気が付いた。
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