スンスクの春恋(スンスク) 56
ウエディングドレスに着替えたミラは、ハニが用意した車椅子の前に移動した。
「お義母さん、お願いします。」
いつも動かしていいタイミングをミラがハニにそう伝えると、静かに動かしていた。
でも今日は、車椅子に座る事を迷っていた。
「お義母さん、今日は車椅子を使わないでスンスクの所まで行きたいです。」
「大変だよ。エレベーターに乗って会場まで移動しないといけないし、もし転んだらお腹の赤ちゃんが心配。」
「そうだよミラ、お義母さんの言うとおりだよ。」
ミラは意志の強い娘だ。
一度決めたらそれを通したくなる。
「一人で歩かないわ。お義母さんと母さんに支えてもらって、自分の足でスンスクの所に行きたい。まだ歩けるし、使わないと筋肉は衰えて行くって、お義父さんが言ってみえたから。」
二人の母に支えられて、ミラは部屋を出た。
そんなミラをスンミは羨ましく思っていた。
エレベーターはすぐ目の前にあるペク家専用のエレベーターだ。
誰もいない廊下をカサカサと衣擦れの音が聞こえる。
憧れていたウエディングドレスを着たミラは、頬をほんのりと赤く染めていた。
ユックリと降りて行くエレベーターの中で、四人は何も話はしなくてもお互いが守り合ってこの先もずっとミラを助けて行く事を誓った。
「新郎様、今新婦様がエレベーターから降りてこちらに向かっています。ドアが開いて、司会がどうぞと言いましたら前にお進みください。」
「はい。」
床を歩く数人の靴の音とドレスの衣擦れの音が聞こえそちらを見ると、ウエディングドレスを着たミラが、スンスクの母とミラの母に支えられて歩いて来た。
初めて見る花嫁姿のミラに、スンスクはポカンとしてしまった。
「見て、スンスクったらミラに見とれているわよ。」
スンミはからかうように言うと、クスクスと笑った。
「お待ちどうさま、スンミがお化粧をしてくれたのよ。スンスクもミラもスンリの事を気にしてお式も挙げなかったから、せめて披露だけはしてあげたくて・・・・・スンリにね、どうせお祝いをするのならいきなり決行した方がいいって言われて。アッパもそれでいいんじゃないかって言ってくれたの。」
「お母さんありがとうございます。」
「スンスクは昔から自分から言い出せない子だったでしょ?ミラと結婚したいと言う事が最初で最後の出来事だと思うし、オンマもアッパもあなたに構ってあげられなかった事を本当に申し訳なくて・・・・・・これくらいのサプライズで許してもらおうなんて思わないけど・・・・スンスク、ミラと幸せになってね。」
ハニが言い終わると同時にとドアが開いて、司会の声が廊下まで聞こえた。
「もう一組の新郎新婦のご入場です。温かい拍手で迎えてください。さぁ、どうぞ!!」
参列者の視線がスンスクとミラに注がれると、ミラはスンスクの腕に自分の腕を絡ませた。
お互いに顔を見合わせて頷くと、一歩会場に足を入れた。
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