スンスクの春恋(スンスク) 57
ウェディングマーチではなく、スンリとソラの披露宴に参加している人たちの、温かい拍手で二人は迎えられた。
人の前に出る事が苦手なスンスクは、今この場所から逃げ出したくて仕方がなかった。
腕に伝わるミラの温もりにミラの方を見ると、ミラの瞳がキラキラと輝いていた。
そうだ僕はミラよりも年下だけど、夫でもあり父でもある。
目を潤ませているミラはきっと本当はドレスを着て披露宴をしたかったはずだ。
大丈夫、一緒に祭壇まで歩こう。
言葉は交わさなくても、心が通じると言うのはこの事だろうか。
自分たち二人を待っている兄スンリとその花嫁ソラの方へ真っ直ぐに進んだ。
スンリは弟を迎え、ソラはミラを迎えて二組の若い夫婦が招待客の方を向いた。
スンリは司会者からマイクを受け取って、弟の肩に手を乗せた。
「弟のスンリとその妻のミラです。事情があって二人は結婚式をしていません。この披露宴は、そんな弟夫婦を皆さんに認めてもらうために、ソラには了解を得て家(うち)の家族で内密にこの席を用意しました。決してついででもなく、兄よりも結婚を早くした事を気にしている弟の、その気持ちを楽にしてあげたいと言う兄の気持ちです。」
スンリの言葉に招待されている人たちは拍手を送った。
「そして弟夫婦は冬には可愛い子供が生まれます。その子供の為にも皆さんの温かい拍手をお願いします。」
会場は一斉に<おめでとう>と祝福の言葉と、拍手が響いた。
「ヘラ・・・ヘラ・・知っていたか?」
「私は知らなかったわ。ソラが何かあっても、あなたが興奮してスンリに殴り掛からないでって言う事は聞いたわよ。」
「オレがスンリに殴り掛かる?スンリの弟が先に結婚していても、別に殴りかかる事でもないだろう。」
確かにそうだ。
別にスンスクとミラは、ユン家とワン家に何も関係がない。
突然何かをするソラの事だから、とんでもない事に違いない。
大体ギョンスにしたら、ペク家の息子のスンリは、妻ヘラが唯一振られた男の子供だ。
可愛い後輩のスンジョではあるが、最愛の妻を泣かせた男でもある。
スンリはその後輩スンジョと瓜二つの顔をしている。
「あの・・・みなさん。」
スンリの持っていたマイクをソラは受け取り、会場を見回してニッコリと笑った。
「スンリと私達にも多分スンスクとミラさんと同じ頃に、可愛い赤ちゃんが生まれます。」
「な・・・な・・・・」
ギョンスは殴りかかるどころか、愛娘の告白でその場に倒れた。
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