スンスクの春恋(スンスク) 72
パラン高校の制服を着た、長い髪をきっちりと結んだ奇麗な顔立ちの孫娘に成長をした姿を愛おしそうにハニは見ていた。
「お父さん、行って来ます。」
「ミレ、お父さんを置いて先に行くけど何かあるの?」
「フィマンが、宿題をやっていないから、お父さんが怒っているの。」
パラン高校の制服を着て玄関でスリッパから靴に履き替えて出て行くミレは、今日から高等部に進級する。
ミラとよく似た娘に成長したミレを見ると、ハニは自分と重ね合わせた。
幼い時に母親を亡くした孫は、自分と同じように寂しい思いをさせない様に、出来る限り学校に行く時に送り出し、帰って来た時には『お帰り』と行ってあげられるようにしていた。
「フィマンはいったい誰に似たのか・・・・頭はいいのに、宿題はしないし・・・・」
「ハニだろ・・・」
「頭はスンジョ君よ・・・・性格も似ているかな?結構あの子ったら意地悪を言って、私をからかうの。『おばあちゃんは、スンミ姉さんよりも胸が小さい』って・・・7人とも母乳で育てたのだから、大きさなんて関係ないって言ってやったわ。」
「50過ぎのおばあちゃんが孫と言い争っているのか・・・・」
「だって・・・」
「オレはハニの小さい胸が好きだぞ。」
「嬉しいのだか・・・よく判らないけど、スンジョ君がそう言うのなら忘れるわ。」
バタンと勢いよくドアが開くと、パラン中学の制服を着崩したフィマンが逃げ出すように玄関まで一気に走って来た。
「フィマン!お父さんの気持ちも判りなさい。」
「判んないよ!行って来ます。」
「フィマン、ご飯は?」
いらないという声が聞こえないくらいに猛スピードで逃げ出したフィマンの後を追うように部屋からスンスクが出て来た。
「学校の勉強がつまらないから、宿題はしないと言うんですよ。」
「フィマンも頭がいいから物足りないのよね。私もよくやって行かなかったから。」
ハニの場合と成績のいいフィマンとは違う事は、スンジョもスンスクも判っているが、ハニを好きな二人はそれを口にする事はなかった。
「スンスク、今日は何か用事があるのか?」
「始業式なので、学校に残って生徒の名簿をチェックしようかと・・・・お父さんが何か僕に用がありましたら早く帰って来ます。」
スンジョがハニに合図をすると、ハニは茶封筒をスンジョに渡した。
「スンスクの事情は話してある・・・・」
「お父さん、気持ちは変わりません。僕にはミラだけですから。子供の為と言われるかもしれませんが、子供達も母親が必要な年齢ではありませんから。行って来ます。」
最愛の妻ミラが無くなってから14年間、何度再婚の話を持って来ても、一度も写真すら見ようとしない。
「いつまでもミラだけを想い続けて、頑固な奴だ。」
「そりゃあ、私たちの子供の中でスンジョ君に一番似ている子ですから。」
「あの頑固さは、ハニと匹敵する。じゃ・・・オレも病院に行くから。」
ハニの反論を避ける様に、スンジョは車の鍵を手にして玄関を出て行った。
「スンスクの気持ちも判るけど・・・・・・他の子供たちと同じように、幸せになって欲しいな・・・
「ミレ、おはよう。早いわね。」
「お父さん・・・・ペク先生に頼まれたの、外部から来た人が困らない様に、先に登校して迷っている人を見たら助けてあげなさいって。」
「ミレもペク先生も真面目なんだから・・・どこに行くの?」
ミレは外部新入生の手続きをする受付場所で、焦って何かを探しているひとりの女の子に気が付いて近づいた。
「どうかしたの?」
「あ・・・すみません、外部から来たのですけど・・・・・入学許可書が見つからなくて・・・どうしよう。」
「大丈夫よ。明日持ってくればいいから・・・・出身中学と名前を教えて。」
「イルサン中学のホン・ミラ・・・・」
ホン・ミラ?
ミレはその名前を聞いて、驚いてその子の顔を見た。
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