スンスクの春恋(スンスク) 75
「先輩お待たせしました。」
パラン大学外国語学科教授ソン・ジョンオンと書かれた札の掛っている部屋のドアが開いた。
「ソン教授、久しぶりです。」
ソン教授の後ろから続けて一人の女性が入って来た。
「娘のセイラです。」
「初めまして、セイラです。」
「ペクです。」
お互いに挨拶をすると、ソファーに腰を掛けた。
「息子さんはどうでしたか?」
「申し訳ない・・・・写真も見ないで、拒否をして・・・・・」
「そうですか・・・亡くした奥さんをまだ想っているんですね。」
「情けない男です。いつまでもこのままではいけないと思っているのですけど、どうも頑固な奴で・・・・・・・孫のフィマンも反抗期に入って、ソン教授のお嬢様も大変な息子を持った男でもいいのですか?」
セイラは父であるジョンオンの顔を見てから、スンジョの目をしっかりと見て話した。
「構いませんわ。スンスクさんはとても立派な教師だとお聞きしています。息子さんもきっと母親がいれば、心穏やかになると思います。」
「そう言ってくだされば嬉しいですが・・・・・時間を掛けて息子を説得して、一度お嬢様を会わせる事にしていただけませんか?」
「勿論、先輩がうちの娘でいいとおっしゃるのでしたら、時間が掛っても待ちます。セイラも妻の母国から来たばかりで知り合いもいないですし、さり気ない出会いで近付くというのもいいと思いませんか?」
スンスクの為にスンジョは何とかこの縁談を勧めたかった。
今までも何度か子供達の為とか言って見合い話を持って行ったが、一度も実現をする事はなかった。
まだ二人の子供たちが小さい時に、一度だけしたお見合いも断ってしまったが、あの時は時間が経てば再婚をするだろうと考えて黙っていた。
自宅に戻る車の中、スンジョは深いため息を吐いた。
「全く、スンスクはハニ並の頑固さで困る。一途にミラを想い続けても、子供が成長したら親から離れて行く事を知らないと。オレの心臓の事もあるし、ハニだって年は取って来ているのだから、早くアイツも幸せになって欲しいよ。」
今もミラの写真を片時も離さないスンスクが、時々ミラの墓に一人で行っている事は知っていた。
亡くした人の墓を参る事は悪い事ではないが、19歳で結婚して24歳でミラを亡くしてからもう13年も経っていた。
「ただいまぁ~」
「お帰りフィマン・・・・・フィマン・・どうしたの?」
「喧嘩した・・・・」
「怪我は?おととい中学生になったばかりなのに・・・制服が破れちゃっているじゃない。」
破れた制服をハニは脱がせて顔の傷を手当てをすると、ハニはフィマンに聞いた。
「どうしちゃったの?最近喧嘩ばかりして・・・・スンリもよく喧嘩をしたけど、フィマンはいい子だったじゃない。」
家に誰もいないとフィマンも穏やかに話をする。
まだ本当に小さい時は、グミも一緒にこのリビングで遊んでいたが、最近は入退院を繰り替えしているから祖母のハニとしか話をしなかった。
「おばあちゃん・・・・僕が生まれなかったら、お母さんは死ななかったの?」
「フィマン・・・・どうしてそんな事を言うの?」
ミラの死はフィマンの出産とは関係の無い事は、家族の誰もが知っているし、そんな事を言った事は一度もなかった。
「誰がそんな事を言ったの?」
「学校の奴ら・・・・・お前のお父さんは19歳で結婚して・・・・スケベだって・・・・・」
事情を知らない親が子供にきっと話したのだろう。
スンスクとミラが結婚してから、ハニはミラの看護の為に仕事を辞めた。
辛い事も口にしないスンジョと似た性格のスンスクを助けたいと思って、ずっと続けたかった看護師の仕事を辞めた。
スンスクが少しでも長くミラと一緒に暮らす事が出来るようにと願っていたのは家族全員思っていたが、他人がどう思っていたのかはハニは知らなかった。
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