スンスクの春恋(スンスク) 77
フィマンの気持ちを判っているつもりでも、人それぞれ考えは違うから本当は人の気持ちなんて判らない。
一度もフィマンを抱きしめた事はないと言われても、そんな事はないと言ってあげたい。
「フィマンは覚えていないと思うけど、生まれてすぐにお母さんに抱いてオッパイだって飲んだよ。」
あれが抱いたという事で、授乳したと言えるのかは判らないが、意識が無いのに生まれてすぐに胸の上にフィマンを乗せた時に、ミラの手はかすかに動き、フィマンは母の胸に自然と口を持って行き喉が動いた。
子供を何人も産んだハニだから、判った事かもしれないが、あの時のミラはもしかしたら・・・・
「おばあちゃん・・・・・」
「ごめん・・・着替えていらっしゃい。少し焦げたけどフィマンにクッキーを焼いたから。」
「はい。」
まだ子供で素直な時もある。
フィマンが生まれた時は、ミラは眠っている時が多くてほとんど意識が無いに等しかった。
ミルクを飲ませてオムツを換えて、お風呂に入れて・・・・・
自分の子供の様に育てたあの小さなフィマンが、自分の生い立ちに苦しんでいる。
フィマンはスンリに似ているし、スンギにも似ている。
だけどやっぱり一番似ているのはスンスクだ。
ミラが望んだスンスクに似た男の子に育っている。
スンスクもずっと悩んでいた事があった。
自分だけ兄妹と似ていないし、両親にも似ていないと。
スンミが生まれてすぐに授かった子供だった。
予定外の妊娠で戸惑ったが、スンリの前で亡くした子供の事を思うと、その子供が自分のお腹に宿ったのだと思っていた。
スンスクは物静かで大人しくて、子供らしさに掛けていたが、安心して見ていられる子供。
身体の弱いスンミに、私もスンジョ君もかかりきりで、スンスクは早くから一人で本を読んでいた。
スンギが生まれて、少し間を開けて双子が生まれた。
スンミとスンスクは、私が仕事に復帰していた時は、いつも一緒にいて困った時にはお互いに相談をしあっていた事は知っている。
スンミが妻子あるバレエ教室の先生と不倫をしていた時も、親よりもスンスクは心配していた。
スンスクはいつもひとりで考え込みひとりで頑張ってしまう。
「スンジョ君みたい・・・・」
「何がオレみたい・・・・・だって?」
静かなリビングで考え込んでいたから、スンジョが帰って来た事に気が付かなかった。
「フィマンは帰って来ていないのか?」
「帰って来たけど・・・う・・ん・・チョッとね・・・ところで、スンスクのお見合いの事だけど・・・」
「待っていてもらっている。アイツもお前と似て頑固なところがあるからな。」
「スンジョ君だって・・・・あっ!話がしたいけど、ここでは・・・・・」
チラッとスンスクの部屋の方を見たハニに、何かフィマンに聞かれたくない事があるのだと直感した。
「部屋に行こうか・・・」
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