スンスクの春恋(スンスク) 79
夕方になる前にミレが帰宅すると、家の中は笑い声が溢れ楽しそうだった。
ミレもハニが夕食の準備を始めると、一緒にキッチンに立ち野菜を洗ったり切ったり炒めたり・・・
ハニの料理の腕は上がったと言えば上がったが、味がどうのと言うよりも気持ちが伝わる料理だった。
フィマンは喧嘩をして帰宅した頃より落ち付き、グミとパズルをして遊んでいた。
スンジョは、そんな二人を見ながら本を読んでいるごく普通の家庭の静かな時間だった。
ガレージが開く音がすると、フィマンはビクンと身体を動かし拳を握った。
「どうしたの?」
「何でもない。」
表情を変えてフィマンはパズルに集中をしている振りをした。
「お父さんが帰って来たみたいね・・・・」
「う・・・うん」
スンジョは横目でチラッとフィマンを見て、ハニは心配そうな顔でフィマンを見た。
ミレは濡れた手を拭いて、父を迎える為に玄関に行きスリッパを揃えて待っていた。
勢いよく玄関のドアが開くと、ミレが用意していたスリッパを履かずに上がり、鞄を床に音を立てて置くと、逃げようとするフィマンを捕まえて行き成り平手打ちをした。
「スンスク!」
「お父さん、止めて!」
物静かなフィマンが赤い顔をして、子供の頬に平手打ちをした事は初めてだし、こんな風に怒った事も初めてだった。
ハニから事情を聞いていたスンジョは、もう一度フィマンの頬を打とうとしていたスンスクを止めた。
「お父さん、離してください。」
「離さない・・・ミレ、グミおばあちゃんとおじいちゃんの書斎に行っていなさい。ハニはフィマをソファーに座らせて。」
「フィマン、人を殴って怪我をさせたって?」
「殴っていない!」
「額をガラスで切って三針縫ったと、怪我をした子の両親が高等部の職員室まで来たんだよ。」
「殴っていない!!」
「じゃあ、どうして診断書を持って高等部の職員室まで親が怒りに来たんだ?」
「知らないよ!その子が嘘を吐いているんだよ。」
唇を噛み締め堪えているフィマンをスンスクから隠すように、背中を向けているハニは泣いていた。
ハニは親子の喧嘩で、昔のスンジョとスチャンの時の事を思い出した。
あの時は暴力は無かったが、スチャンは胸に痛みを感じて倒れた。
スンジョは仕事の無理が祟って、心臓を悪くしていた。
スンスクに何か話しているスンジョがもしここで倒れでもしたら、自分の事で父が怒っていると分かるフィマンは傷付く。
「スンスク、お願いだからフィマンを叩かないで。お父さんの心臓の事を考えて・・・・・」
ハニは小柄なフィマンを守るようにして抱きしめて泣いていた。
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