スンスクの春恋(スンスク) 80
ハニに抱かれているフィマンは、隙間からスンスクを睨んでいた。
それは頬を平手打ちをされたから怒っているのではなく、父が知っている事は事実とは違うと言いたかったから。
「スンスク、フィマンから何もその時の事情を聞かないで頬を打つ事はよくない。」
「すみません、少し気が高ぶっていました。でも、診断書を持って来た事は事実です。」
「どこの病院だ?」
スンスクもスンジョと同じで、一瞬それを目にしただけで、書いてある事を記憶してしまう。
「セントラル外科病院です。」
「セントラル・・・・・コ・シン院長か・・・・」
「スンジョ君、知っているの?」
「教え子だ・・・・・で、怪我をした子は、身体は大きい方なのか?フィマンは中学一年生の平均よりも体格は小さいから、怪我をした子はフィマンより大きいとは思うけど。」
ハニに抱きしめられているフィマンは、少し身体を離してスンスクをチラッと見てスンジョに聞かれた事に応えた。
「僕よりも大きい。170センチくらいで肥っている。」
150㎝チョッとでやせ気味のフィマンに、170cmくらいの背で簡単にガラスに額をぶつけて怪我をする事自体無理がある。
「おじいちゃん、僕本当に暴力を振るっていないよ。その子とあと何人かの子が僕を蹴飛ばしながら、お父さんとお母さんの悪口を言って・・・・逃げようとしたら、服を引っ張られて転んだんだ。」
まずフィマンの話を聞こうと、スンジョはスンスクにそう言うと、スンスクもそれに従い、フィマンが言う事を黙って聞いていた。
「お前のせいでお前のお母さんは死んだんだ・・・・お前は・・・・・生きている価値がない人間だ・・・・て言って、みんなして僕を蹴飛ばしたんだ。やり返したかったけど、ヤラレてもヤリ返したらいけないってスンリおじさんが言っていたから我慢していた・・・でも、痛くて我慢ができなかったから、隙を狙ってそこの場所から逃げ出したのが窓の方で、勢い余って怪我をした子がガラスにぶつかって怪我をした。だけど、僕・・・・・そのまま逃げて来た。」
唇をグッと噛んで、喧嘩をした相手の子が怪我をした時の状況を話した。
ガラスを割った後、保健室に行くまでは見ていないし、このままここにいては自分が辛くなるだけだと思って家に帰って来たと言う事を、一気に話した。
「おじいちゃん、おじいちゃんは医者だから、本当の事を知っているよね?僕のせいで僕のお母さんは死んで、だからお父さんは僕の事を嫌いなの?僕・・・お父さんが好きだしお姉ちゃんも好き。だって、小さい時からいつも一緒にいたから。でも・・・・」
「フィマン、どうしてフィマンが生まれたのかは、おじいちゃんが言うよりも、お父さんから聞きなさい。でも、これはちゃんと言えるよ。フィマンのお母さんは、フィマンが生まれる事を楽しみにして病気と闘っていたんだ。フィマンを生むために、薬を飲むのを止めたけどそれはフィマンが元気で生まれるようにと願っての事だよ。」
スンジョもハニも、フィマンが生まれる前に、初めて二人が喧嘩をした事を思い出していた。
1秒でも長く生きて欲しいというスンスクと、スンスクの為にスンスクとよく似た男の子を生みたいと言って言い争っていた。
フィマンをお腹に宿した時のミラの幸せそうな顔は、今もスンジョとハニとスンスクは忘れられないし、フィマンが生まれてから意識を取り戻す事なく逝ってしまったあの時のスンスクの悲しみと、小さなミレと生れたばかりのフィマンの二人が、目を開ける事のない母の傍で遊んでいた時の光景が綺麗な空間だった事も覚えていた。
「理由を聞かないでフィマンの頬を叩いた事をスンスクは謝って・・・・・私は夕食の準備をして来ないといけないから。」
「はい・・・フィマン、お父さんはお前を信じていなくて悪かった・・・・・・お母さんがフィマンをどうして生みたかったのかを、ご飯の後に話してあげるよ・・・・お父さん、その時は書斎を貸してください。」
スンスクは、ミラがフィマンを生む事を決めた理由を話す事にした。
それを聞けば、フィマンの心がたとえ少しでも楽になるような気がしていた。
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