スンスクの春恋(スンスク) 81
「ごめんねぇ~ホットサラダと厚切りベーコンで!」
ポトフの予定がホットサラダに代わって謝る事などないし、春にポトフも美味しいとは思わないが、ハニの作る食事は一応彼女なりに家族の身体の事を考えている。
「大丈夫よ、私に合わせて春のポトフにしているのだから。」
たしかにそれはそうかもしれない。
年老いたグミのためにどんな風な食事がいいのかと考えれば、ポトフが一番いいのかもしれないから。
ふとスンスクは、10年くらい前の高校時代のスアの事を思い出した。
「スアとスングは、今日はミナの所に行っているのか?」
「そう・・・でもスングは本屋に寄って帰って来ると言ったけど、スアからは連絡はまだないわ。」
「一緒に帰って来るのだろう。」
受験学年になっても、スアとスングは受験勉強どころか、受験学年になったからと言って焦っている様子もない。
さすがにペク・スンジョの子供だという人はいるが、パラン高校の国語の教師をしているスンスクは兄として心配して、ふたりの担任に様子を聞いた事があった。
その時に言われたのは「授業に集中しているから、そんなに焦らなくても夏からの追い込みでふたりは大丈夫だ」と言われていた。
「スンスク、どうしたの?」
「車の中に忘れ物をしたから・・・・・」
「門の鍵が開いているのか見て来てくれる?スングとスアがきっともうすぐ帰って来るから。」
歳の離れたスンスクの弟と妹。
自分の娘と変わらない年齢でも、父や母のように大らかな気持ちでフィマンを見守る事が出来なかった。
ミラの命と引き換えに生まれたフィマンだから、ミラの為にも良い子でいて欲しいと思っている。
スンスクが、ガレージを出ると門の前で車が停まる音がした。
時々、スンハやスンリが来る事があるが、この時間に来る事は殆どないし、スンミは海外にいるから、滅多に来る事はない。
「誰だろう・・・・・・」
門の扉を少し開けて外を見ると、見覚えのある車が停まっていた。
「ミンスか・・・・・」
ミンスは母の看護学科時代のギョルの息子だ。
スンスクとは幼馴染で、友達が少ないスンスクの一番の仲良しだった。
成績で分けられているパラン高校に進学してからは、同じクラスになった事はなかったが、母の親友の子供と言う事で、時々ペク家に来る事があった。
スンスクは、ミンスを迎え入れようと扉を開けると、車の助手席からスアが降りて来た。
「ミンスに送ってもらったんだ・・・・・」
スンスクが声を掛けようとした時に、ミンスはスアの方に顔を近づけるとスアはミンスの首に手を回した。
見てはいけない物を見てしまったと思ったスンスクは、気が付かない振りをして扉を閉めて、玄関に通じる階段を上がった。
その後すぐに門扉がガチャリと閉まると、鼻歌を歌いながらスアが階段を上がって来た。
「スンスク兄さん・・・・・・」
「ミンスは家に入らないのか?」
「うん・・・・先に家に入るね・・・あ~お腹が空いた。」
まだ子供だと思っていた妹が結婚をして、場所が外で時間が昼間でも平気でキスをする。
スンスクはあれから自分も歳を取ったし、ミレと歳が近いスアの行動に、ミレにも近いうちにそんな相手が出来る年齢になった事に気が付いた。
ミレがもし誰かと結婚をしたら自分の前から離れて行くし、フィマンにしても何年か後には親から独立をするだろう。
その時になったら、この家で父と母と三人で暮らすのかと考えると寂しさを感じた。
兄妹たちの理想は父と母の様な夫婦になる事。
年の離れたスングとは話をしても教師と生徒の関係の延長で、兄弟で仲良く外出をしたと言う記憶はない。
それに、兄妹で一番仲の良かったスンミは海外での仕事が多くて帰国する事も無い。
「見合い・・・・してみた方がいいのかな・・・・ミラ、僕は君と一緒に生きたかった。」
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