あなたに逢いたくて 11
「お・・・お見合い?」
「スンジョ君・・・・ハニとは・・・ハニとの結婚はどうするんだ?スチャンはハニとのことを知っているのか?」
スンジョは、首を横に振った。
視野に入るハニは顔が青ざめて、今にも倒れそうに震えているのが判った。
「親父に言う前に・・・・・・倒れて、まだ言うことが出来ていないです。お袋はハニを溺愛しているから喜んでいたんですけど・・・・・・」
「お見合いって・・・・・・結婚するの?」
「お見合いはそれが前提だから・・・・ハニと結婚しようと思っていたから受けたくなかった・・・・だけど社員の生活の事を考えたら・・・・・・・」
「そんな・・・ヤダよ・・・・・スンジョ君と結婚できないなんて・・・・・・」
「おじさん・・・ハニ・・・・すみません。結婚の話しはオレから言い出したことなのに、ハニと結婚したい思いは嘘ではない・・・・・オレひとり・・オレが出来ることは親父の意思を継いで、会社を・・・・」
<ガタン>
ハニは足に、身体が麻痺するように力が抜けてその場に倒れた。
ヤダよ・・ヤダ・・・・スンジョ君が他の女の人と結婚するなんて。
私はスンジョ君以外の人を好きになれないのに・・・・・・
私の片思いから始まったスンジョ君との楽しい思い出は夢だったの?
スンジョ君が私以外の人に笑いかけて、話しかけて・・・・キスして?
今までの事が夢だったの?それとも、今のこの時も夢なの?
私、諦める事が出来ないし、忘れる事なんて出来ないよ。
スンジョ君の声も、温もりもシャンプーの香りも何も忘れることが出来ないよ。
今までの私だけのスンジョ君との思い出が消えちゃうの?
ギドンはハニをソファーに寝かせて、柔らかな髪をなぜながらスンジョと沈黙の時を過ごしていた。
どちらが先に言葉を口にするのか、スンジョもギドンも思っていることが言葉として出てこなかった。
大切な娘が、数日前間までは、親友の息子と結婚すると信じていた。
大学を卒業するまであと一年。
娘を手放す淋しさはあったが、最愛の妻が幼い娘を残して世を去る時の願いの一つでもあった花嫁姿を思い浮かべていた。
「会社のため・・・・スチャンの会社の規模になれば、それなりの家柄の御嬢さんを伴侶にするのが一番だということは判る。」
ギドンの娘を思って苦しそうに出て来た言葉を聞き、スンジョは顔を上げた。
「すみません・・・・・・」
「ひとつだけ聞くけど、ハニとはどこまで・・・・・・・いや聞くのはよそう。お見合いをすることになったのは会社のためかもしれないけど、話が進んで結婚してもその女性と仲良くやってくれるか?」
「おじさん・・・・」
「ハニはこんな娘だ。スンジョ君しか見えていなかった・・・・見ていなかった。だからと言って、君をしつこく追い回したりはさせない。だけど、忘れないでいてやってくれるか?ハニという女の子が、純粋に君の事だけを好きだったと。」
ギドンは穏やかな口調で話はしていたが、娘の事を思うと親友の息子とはいえ結婚を約束したハニやお互いの親に相談もしないで、簡単にお見合いの話を決めたことを素直に認めようと思う事は出来なかった。
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