スンスクの春恋(スンスク) 84
ミレは職員室から教室に帰ると、窓際の席で本を読んでいるミラに駆け寄った。
「ねえ、ミラ・・・今日うちに来ない?」
「ミレの家に?」
「私達、何だか気が合いそうだから家で一緒に勉強をしたりして、もっと近づきたいの。塾とかに行っているの?」
ミラはニッコリと笑って首を横に振った。
「塾には行っていないよ。うちは母子家庭でそんな余裕がないから。」
「うちとは違うね。」
「ママがパラン高校の月謝を払うのに、また仕事の量を増やしているから、塾に行きたいとは言えないよ。」
「それなら、私の家なら教えてくれる人は揃っているわよ。お父さんは国語の教師だけど、全般は教えてくれるし・・・・・おじいちゃんも全般に大丈夫だけど医者だから・・・病気の事とか教えてくれるわ。スンギおじさんは、料理と植物で・・・・ボランティアの事なら電話でスンミおばさんに聞けばいいし・・・・あとは・・・おばあちゃんなら、好きな男の子との恋の成就かな?」
「好きな男の子は・・・・・・」
ミレはずっとパランで育ったから、外部での友達はいない。
人見知りのミラはミレの明るい笑顔に、この人と友達になりたいと思っていた。
「いいのかな・・・・・・」
「いいよ。あのレンガ造りの家が私の家よ。」
高級住宅が立ち並ぶ家の中でも、一際大きなミレの家にミラは驚いていた。
「私の家って言うけど、おじいちゃんの家なの。お母さんは弟が産まれた時に亡くなったから、おじいちゃんとおばあちゃんとお父さんのおばあちゃんが、私たち姉弟のお世話をしてくれたの。お父さんも出来る限り、私たちの事はしてくれても、学校の関係で帰って来るのが遅かったりしたから。入って・・・・・」
ペク家の門扉をミレが開けると、綺麗に手入れをされた庭木が風に揺れていた。
まるでミレとミラを、風が家の中に誘い込むように。
初めて来たペク家の庭を、ミラはどこかで見たような気がした。
この石の階段も歩いたような・・・・懐かしさと言うのではなく、一段一段上がって玄関のドアを開けると、温かい家族が迎え入れてくれるようなそんな気持ちになる。
きっと、この家の人たちが温かい心の持ち主だからなのだと思った。
「おばあちゃん、グミおばあちゃん、ただいま。」
ミレが元気に家の中に入ると、ミレとよく似た感じの明るい年配の女性と可愛らしいおばあさんが出迎えた。
「お帰り、お父さんから連絡を貰ったわ、お友達を連れて来たのね。」
「そうなの、いい子なんだよ。ちょっと人見知りをするけど、仲良くしたくて連れて来ちゃった。ミラ・・・・・・」
ミレに呼ばれてミラが玄関に入ると、恥ずかしそうに挨拶をした。
「初めまして、パラン高校一年一クラスのホン・ミラです。」
「ホン・ミラ!」
ハニもグミも、勿論スンジョもその名前を聞いて驚いた。
偶然なのか、それとも運命なのか、ミラが亡くなってから13年目の春の日に、ペク家に若くして亡くなったミレの母のミラと同じ名前の女の子が目の前に不安そうな顔で立っていた。
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