スンスクの春恋(スンスク) 89
おじさんは、私のお父さんだと思っていた。
ずっとそう思っていたから、お母さんがどうしておじさんに自分たちがこんなに惨めな生活をしているのに、援助をして貰わなかったのか知りたかった。
「ミラは・・・・おかあさんがある男に暴行をされてできた子供だ。」
「ある男って・・・・・暴行されてできた子供なら、どうして私を生む事にしたの?見るだけで思い出すでしょ?」
お母さんはそれまで何も話さなかったが、おじさんがお母さんの手をギュッと握ると、大きく深呼吸をして話し始めた。
「昔、おじさんとお母さんはお付き合いをしていたの。お母さんは地方から出て来たばかりで、コンビニでバイトをしながら大学に通っていたの。おじさんはそこに来るお客さんで、よくお母さんのシフトの時に来る人だと思っていた。」
「お母さんに一目ぼれをしたんだよ。おじさんがいつか大学を出て、社会人になったら結婚するつもりだった。手をつなぐまでに半年もかかるくらい、お互い恥ずかしくてキスなんてとてもできなくて、触れるだけのキスをするだけでも随分と時間が掛った。その頃に、おじさんの兄が、一人の女性と婚約をして家の中は、結婚に向けてバタバタとしていた。ところがそのおじさんの兄が突然難病になった事を知ると、婚約破棄をする事になって、兄が結婚しないのに弟のおじさんが結婚する事はもっと先になると思っていた時、おじさんの兄は婚約中だった人とは別の人と付き合っていた事が判った。その女性が妊娠していた事で、両親とおじさんの兄はもめていた。その事情があって、おじさんの両親は家を留守にする事が多く、おじさんも家の留守番をしなければいけなく、お母さんと外でデートをする事が出来無かったから家に呼んだんだ・・・お母さんを・・・・ある日、おじさんが少しの間、お母さんを家に置いて用事を片付けに行っている間に・・・おじさんの・・おじさんの兄に暴行されたんだ・・・・・・・まだおじさんともキスらしいキスをした事がなかったのに、無理矢理・・・おかあさんが妊娠したと知った時は、もう5ヶ月を過ぎていて堕ろす事も出来なかった。」
「ゴメンね、ミラ・・・・・おじさんがお父さんだとずっと思っていたんだよね・・・・」
「おじさんは、どうして結婚していないのに、お母さんにプロポーズもしないで家に泊まりに来るだけの愛人みたいな生活をさせていたの?」
おじさんとお母さんは黙っていた。
独身なら何の障害もないはずなのに、どうしてなのだろう。
私がいたからなの?
「お母さんが、おじさんの前から逃げたの・・・・ミラが出来た事を知って、田舎の親にも言えないし、汚れた身体でおじさんと結婚が出来るわけがないと思って・・・逃げたの・・・・・まだ、19歳になったばかりで、自分がどうしていいのか判らなくて。ショックと栄養不良で、駅で倒れた時に偶然に助けてくれた人がパラン大の医師と看護師・・・その人が、お母さんの携帯に登録をしてあったおじさんに連絡をして・・おかあさんが妊娠した事をおじさんのお兄さんやご両親に話してくれたけど、結婚をする事を許してもらえなかった。お母さんがおじさんのお兄さんを誘惑したとされたから・・・・」
知らなかった。
おじさんはそんな風にして生まれた私を可愛がってくれた。
てっきり、おじさんには家庭もあって、お母さんは愛人なんだと思っていた。
おじさんの顔と私の顔のどこか似た所があっても、おじさんのお兄さんの子供だったから。
「ミラ、どうしたの?」
「ミレ・・・・・何でもないよ。ちょっと考え事をしていただけ。」
人それぞれに色々な事情がある事は判っている。
ミレの話を聞いても、裕福な家庭で育ったミレも小さい頃に母親が病気で亡くなり、父親と母親の出会いの話を聞いた時はショックだったと言っていた。
私の理想の父親は、ミレのお父さんのように亡くなった妻を、再婚をしないで、ずっと思い続けている。
そんな一途な男性が理想だった。
でも、いつもうちに来てくれていて、私がお父さんだと思っていた人も、お母さんを一途に思い続けていた。
「今度の日曜日、うちに来ない?」
「ごめんね・・・・母親が再婚するみたいで、相手の人の家に呼ばれたの。」
「そうなの・・よかったね。お父さんが出来て。」
良かったのかなぁ・・・・向こうの家には、私の父親と言う人もいるし・・・複雑・・・
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