スンスクの春恋(スンスク) 90
おじさんの家は古いけど大きな家だった。
お母さんが緊張をした顔でインターフォンを押すと、おじさんがすぐにそれに応えてくれた。
庭が見えない高さの木製の扉が開くと、おじさんが走って来たのか荒い息をしながらお母さんを見て嬉しそうな顔をした。
「何も気にしなくてもいいから・・・兄が結婚して子供が生まれた時にリフォームをしたから、心配しなくてもいいよ。ミラもそんなに緊張をしなくてもいいから。」
お母さんにしたら、思い出したくもない嫌な思い出のあるこの家。
あの出来事が起きて、泣いてこの家から飛び出したと言っていた。
たった一度の事で、お母さんの人生は変わってしまい、私と隠れるようにしてあの家に住んでいた。
「入って・・・・お父さん、お母さん・・ミニョンです・・・・」
おじさんは嬉しそうな顔で応接室に私たちを案内すると、気難しそうな年老いた男性とプライドの高そうな年老いた女性が、無表情な顔で私たちを見ていた。
その横に、おじさんのお兄さんと言う人とその奥さんが、私とお母さんをジロジロと見ていた。
この家に来るまで、お母さんを悲しませたその男がどんな顔をしているのか見てみたいと思っていた。
たとえその人が私の事を娘だと思ったにしても、父親だとは思わないし思いたくもない。
「へぇー君があの時の子供・・・・・・」
おじさんとは似ても似つかないその人は、私の父親だと判るくらいに私とよく似ていた。
おじさんの両親で私にとったら祖父母になる人が、何も話さないで駆け寄ると行き成りお母さんを抱きしめた。
「ごめんなさい・・・・・私達はあなたに随分と酷い思いをさせてしまって・・・・息子から・・ジオンがずっとあなたの事を一人で支えていたなんて・・・・みんな話は聞いたわ。ジフンが・・ジフンが酷い事をしたって。ジオンと違ってジフンは女性にだらしがなくて、当時婚約していた女性とは別の人を妊娠させ・・・・あの時は、ジフンの事でいっぱいで家の事を放っておいて・・・それなのに凝りもしないで、弟の恋人に・・・・・」
おばあさんに当たるその人は、ずっとお母さんを抱きしめて泣いていた。
おじいさんは、私の顔を見て何も言わずただ涙を流していた。
「ジフンに似ている・・・いや・・顔は似ていても、ジオンから聞く君の話は、真面目なジオンと似ている。勉強熱心で、パランに外部受験のトップで入学したんだってね。」
おじさんのお兄さんの奥さんは、お母さんよりもうんと年上なのに、派手な洋服でお化粧をして品がいい人には思えなかった。
「ミラ・・って言うんだって?誰が名前を付けたんだ?」
「ジオンさんです。」
お母さんがおじさんのお兄さんに答えると、その人はムッとしながら舌打ちをした。
それがなぜなのか、その時の私は知らなかった。
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