スンスクの春恋(スンスク) 95
「あれ?手帳がない・・・・」
ミラは鞄の中に入っているはずの手帳が、見当たらず焦って鞄の中の物を机の上に並べた。
「どうしたの?もうすぐホームルームが始まるわよ。」
「手帳がないの・・・どこに置いて来たんだろう。」
「家に忘れて来たのじゃないの?」
「ううん、家では出していない・・・昨日・・・あ・・」
「どうしたの?」
「何でもない。もしかしたら家で落としたのかもしれない。」
ミラはミレの顔を見られなかった。
ミレが家にいない事を知っていて、先生に会いたくて行った本当は行った。
「今日のホームルームの課題は、中間テスト後に行う課外授業のグループ決めと、そのグループ行動のコース選択。1グループ5人から7人で編成してください。外部から来た生徒もいるので、親睦を深める為にも仲の良い人と組むのではなく、出来るだけあまり話をしたりした事のない人とのグループ編成にするように。」
スンスクが簡単な説明をすると、生徒たちはグループ決めをする為に、すぐにくじを作り始めていた。
スンスクは教室の中を生徒たちの様子を見ながらミラの机の傍に行くと、ポケットの中からミラが忘れて行った手帳をそっと机の上に置いた。
「昨日、忘れて行ったよ。」
ミラはその手帳を見て驚き、誰も自分の事を見ていないか確認をすると、机の横の鞄掛けに掛けられているリュックの中に入れた。
課外授業のコース決めの話をしている他の生徒たちとは対照的に、ミラはスンスクの後姿を眺めていた。
昨日、スンスクの家にミレがいない事を知っていて行ったのは、ただスンスクに会いたかったわけではない。
幼い頃に母を亡くしているのに、ミレは明るくてとても優しい女の子だ。
自分のように生い立ちが複雑で、母の再婚によって心が不安定になっている事をスンスクに話がしたかった。
課外授業で少しでもスンスクに自分の悩みを聞いて貰えるには、スンスクが引率するコースになりたかった。
希望は、基本コースの3コースだけど、1コースなら引率がペク先生。
でも、このコースは男子の希望者が多い。
どうかクジで1コースが当たっても、女子が沢山いますように。
教卓の上に置かれた箱の中から、見学コース番号が書かれているクジを一枚引いた。
「クジ運はよくないから。」
「ミラは何コースになったの?」
「・・・1コース・・・ミレは?」
フフッと笑ってミレは3コースと書いたクジを見せた。
「3コースの王宮巡り。1コースと合流できるのは景福宮(チャンドックン)ね、ここで一緒にお昼を食べようね。」
ミレとコースは違っても、お昼を食べる時に会えるのならそれでもいいと思っていた。
ただ、思った通り1クラスでのメンバーは、私以外は全員男子で例年数人の男子たちは明洞に行って王宮の見学をサボっていると聞いていた。
ペク先生は生徒に口うるさく注意をしたりしないから、一緒に行く男子メンバーがどんな行動に出るのか心配。
どうか何も起こりませんように。
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