あなたに逢いたくて 14

「起きなきゃ・・・・」
ハニが枕元の時計を見ると、時間は9時を少し過ぎていた。
昨夜は、スンジョからの突然の結婚破棄の話を聞き、ショックで倒れた後は眠ろうとしても眠れなかったせいか、身体中がだるくて熱っぽい。

横になっていても眩暈がするからと、ゆっくりと起き上がりベッドから出て着替えた。
部屋を出ると、ウンジョもすでに学校に出掛けたのか、家の中は物音一つしない程に静まり返っていた。
誰も座っていないダイニングテーブルには、ギドンが作った朝食が置かれていた。

ハニは食欲が無かったが、折角父が作ってくれた食事を温め直して、一口口に入れた。胃がねじれるように、食べた物がグッと込み上げて来る。
「食べれない・・・・・・ご飯なんて食べれない・・・・・・・」
それでも何とか口に入れようとしても胃が受け付けなく、冷蔵庫に冷やされていたオレンジジュースだけを飲んで学校に出かけた。

学校に行けば昨夜の話を忘れる事が出来ると思っていても、心が深く傷つき悲し過ぎて授業に集中しようと思っても気持ちが入るはずがなかった。
有名人のスンジョが学校を休学していることを、事情知らない学生たちが同居をしているから何か知っているのではないかとハニに聞いてくる。

スンジョとハニが、付き合っていると言う話は誰も知らないし、二人の間に結婚話が出ていた事も知らない。

当然、会社の為に見合いをすることも知られていない。
誰も知らない事だから、適当な笑顔を向けるだけでその場を切り抜けたが、さすがに高校時代からの親友トッコ・ミナと美容師見習いのチョン・ジュリが顔色の優れないハニを心配して声を掛けて来た。
「何があったのよ、またペク・スンジョに意地悪されたの?」
元気が無く顔を上げないハニは、頭を横に振りながら消え入りそうな声で話した。
「意地悪されるならいいんだけど・・・・・・」
「あんたたち、付き合っていたんでしょ?」
「知っていたの?ミナ」
ミナとジュリは笑いながら頷いた。

「知っていたわよ。ハニたち隠していたけどさ、ミナと私は隠し事が出来ないハニの行動くらいお見通しだよ。」
「ペク・スンジョだって、離れた所からハニを見るときの目・・・・・・・・」
ミナはジュリと目をあわせてクスッと笑った。
「結構、熱~い眼差しだったよ。でも、二人が付き合っているのじゃないかって、気が付いてたのは私とミナだけだったと思うよ。」
「何かあったのなら、私たちが聞いてあげるよ。」
ミナのその言葉にハニは、結婚の約束をしたことは言わなかったが、スンジョがお見合いをすることだけを話した。

「そっかぁ・・・・・・あれだけの企業の御曹司だものね。好きだから結婚というのも難しいのかもね。会社や社員のためにそれなりの家柄の御令嬢と結婚するのが普通だものね。」
「ハニも、ハニと釣り合う男性と結婚して普通の生活をするのが良いんじゃないかな。」
普通の生活・・・・・私はスンジョ君以外を考えたことないし、他の人を好きになれない。
「シュングは?ハニがペク・スンジョを思っていた期間と同じくらいハニの事を思っていたのを知っているよね。ハニのために、ハニのパパのお店で働いているくらいだもの。」
「考えてみない?ジュングとのこと」
ジュングの想いは薄々気づいていた。だけど、話しやすいただの友達としか思ったことがなかった。ミナやジュリの考えもわかるけど、ジュングは友達以上に考えられない。

ハニは、また吐き気に襲われた。
スンジョとの事が報われないと思うと、胃がキリキリとねじれるようだった。
「どうしたの?具合悪いの?」
「ミナ・・・・・胃の調子が・・・・・でも大丈夫。すぐによくなるから。」
「あんまり考え込まないことだよ。それに考え込んで胃が痛くなるなんてハニらしくないよ。」
「そうだよね。」
三人はその後は、もうスンジョの話をしなかった。


夕食の支度をしようとキッチンに立つと、ダイニングテーブルの上に置かれているハニの携帯が鳴った。
スンジョからだ。

今までは嬉しくて直ぐに通話ボタンを押していたが、昨夜の話を思い出して震えて来る手をしっかりと一度握って携帯の通話ボタンを押した。
「もしもし・・・・・・・・」
「オレ・・・・・」
スンジョの声を聞くと、心臓がドキドキと大きく脈打つ。もう結婚はなくなったのだから忘れないといけないと思っても、まだスンジョ君を簡単に忘れることが出来ない。
「今日、夕飯いらないから・・・・・ユン会長と会食があるから・・・・・・」
スンジョ君、今日お見合いするんだ。
「・・・・うん・・わかった・・・・・・」
スンジョ君はまだ何か言いたそうにしているのが判ったけど、それ以上聞くと泣きそうだったから、私は夕食を作っているからと言って携帯の通話を切った。


ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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