スンスクの春恋(スンスク) 100
先生・・・・来ないで・・・ペク先生・・来ないで・・
「ミラ、大丈夫?先生を呼んで来たわ。」
「大丈夫?」
ペク先生の声じゃない・・・
ミラが連れて来たのはスンスクではなく、救護室の女性教員だった。
「大丈夫です・・・ちょっと景福宮を見ていたら・・・涙が出て来て。」
そう、朝鮮王朝時代のこの宮殿に住んでいた女性たちは、女官になる為に密かに想いを寄せていた人への気持ちを封印して生涯をこの中で過ごしていた・・・
その時代の話をペク先生から聞いていたから、その時代の女性と私をリンクして涙が出て来た。
「今・・・生理が来る前じゃないの?」
「はい・・・・」
確かにそうだった。
いつも生理前の時は、精神的に不安定になる事がよくあった。
「PMS(Pre Menstrual Syndromeの略=月経前症候群)ね。大丈夫、心配ないわ。ペク・ミレさん、先生が彼女に付いているから担任のペク先生に伝えてくれる?」
え?
ペク先生に、話すの?
「どうかしたの?」
「先生、ペク先生には・・・・・」
「ペク先生は担任だから伝えた方がいいけど・・・・・恥かしいわよね、男の先生だから。ペク・ミラさん、彼女は気分が悪くなったから先生がタクシーで学校に連れて帰ったとだけ伝えてね。」
我儘だ。
私は我儘・・・・先生に想いを伝えても、それに答えを貰えなかったから泣くなんて。
大人な先生に告白をしても、先生は私の事をただの生徒と思っている。
他の人たちみたいに、ミラのおじいさんとおばあさんの伝説の出会いを夢見ているけど、私はペク先生の物静かな話し方に、入学した時の挨拶を聞いて初めて一人の男性として好きになっていた。
ミレから聞く先生と奥さんの出会いは、とても素敵で叶わない事は判っている。
お母さんがおじさんと結婚をしたら、私はこの町から出て行きたい・・・・
あの家で、あの父親だという人と一緒に暮らしたくない。
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