スンスクの春恋(スンスク) 105
ミラは携帯の保存ボタンを押して、スンスクから貰った紙片を大切な事を書いている手帳に挟み込んだ。
あの家に行けば、きっとここに住んでいたように自分の部屋に引きこもる事も出来ない。
お母さんが結婚をしてあの家に行くかどうかは未定だけど、あの人がいるだけで行きたくない。
いつもあの人の嫌らしい目を思い出して、自分の中に流れている血が汚らわしく思う。
「お水でも飲んで、もう眠らないと・・・・・」
部屋を出てキッチンに言って水を飲んでいると、母の部屋から呻くような声が聞こえた。
仕事から帰って来た時の母の顔は赤かった。
熱があるから食欲もないと言っていた。
いつもはミラが作ったチャプチェを美味しいと言って褒めてくれる。
おじさんもミラが作ったチャプチェが好物だと、来るたびに話していた。
「お母さん・・・お母さん・・・・」
声を掛けても母からの返事が返って来ない。
聞こえるのは辛そうに唸っている声だけ。
「お母さん、入ってもいい?」
返事がないからと言って、そのまま無視をする事は出来ない。
いつも仕事ばかりして、母の楽しみはミラの成長と時々泊りに来てくれるジオンと夜を過ごす事。
化粧っ気もなく、ジオンが買ってくれる洋服も着ないで大切に保管をする。
まだジオンと婚姻を結んでいないから、何かあったらミラは独りぼっちになる。
「ミラ・・・・・起きてくれたの?」
「お母さん、苦しいの?おじさんを呼んだ方がいい?」
「ジオンは・・・おじさんは、今日は海外に出張だからいないの。朝になれば良くなっているから。」
そうは言っても母の肌に触れると焼け付くように熱い。
「待ってて・・・・・」
ミラは急いで自分の部屋に行き、携帯を手にした。
遅い時間ではあるけど、今相談が出来る人はこの人しかいなかった。
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