スンスクの春恋(スンスク) 108
ミラのお母さんの病状は重篤なものではなかった。
日頃の栄養不足で体力が弱っている時に、ウィルス性の風邪に罹患して高熱が出ただけだった。
とにかく熱を下げない事には、体力が弱っているから大きな病気に変わる可能性もあると言う事で一週間くらい入院する事になった。
「病院は完全看護だから、家に帰って休んだ方がいいよ。明日は学校があるから。」
「先生・・・・ひとりが怖い・・・・」
「そ・・そんな事を言っても・・・」
スンスクは傍にいる父のスンジョを見た。
「お父さん、あの・・・彼女を家に連れて来てはいけないですか?ミレの友達なんです。」
「ミレの?それならミレも喜ぶだろうし、連れて来たらいい。ハニに電話をしておくから、その子の母親にメモを書いておいた方がいい。」
「あの・・・・・」
パランの伝説の天才ペク・スンジョが目の前にいる事に緊張をしているミラは、小さな声で何か聞きたそうにしていた。
「あの・・・母の婚約者のおじさんに連絡をした方がいいですよね。おじさんは帰国したら母に会いに来ると思うので・・・・」
「そうだね。おじさんの連絡先は判る?」
ミラは首を横に振った。
直接ジオンに連絡をした事はない。
「お母さんの携帯におじさんの電話番号は登録されているけど、今ここに持って来ていなくて。」
遅い時間にいつまでも病院にいる事は他の入院患者に迷惑がかかる。
着替えや学校に行く時に必要な物をミラの家に一旦寄ってから、スンスクと一緒にペク家に行く事にした。
生徒を個人的に教師の家に泊める事はいけないが、ミレの友達としてなら何も問題はない。
何も問題はないが、スンスクの中で別の感情が芽を出しかけている事を、勘のいい父に知られない様に、出来るだけミラの方を見ない様にしていた。
ミラは荷物を取りに帰宅をすると、出張でアメリカにいるジオンに電話を入れた。
仕事で電話に出られないのか、何度か呼び出し音の後に留守番電話に変わるメッセージが流れて来た。
「おじさん、ミラです。お母さんの身体の具合が悪くなってパラン大病院に一週間入院をします。退院するまで、友達のペク・ミレさんの家でお世話になっています。また連絡します。」
本当はミラは、ジオンの自宅の電話番号を知っていたが、あの家に電話を掛ける事はしたくなかった。
ジオンの兄でミラの父親であるジフンの自分と母を見る目が、初めて会った時から嫌いだった。
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