スンスクの春恋(スンスク) 110
ペク家の朝はハニとミレの笑い声でいつも明るい。
今朝はそれよりも、ミラが夜中に家に来ていた事が嬉しかったのか、いつもよりもミレの笑っている声が明るかった。
「ミレ、ミラがここに泊まった事は他の人に話してはいけないよ。教師が個人的に・・・・」
「判っています。そんな事が公になったら、困るのはお父さんとミラだものね。二人が困るのは私も嫌よ。」
ミレもミラも、他人に軽はずみに言う性格の子供ではない。
この辺りからパランに行っている生徒は何人もいるが、ミラは他の人たちよりも早い時間に登校している。
「じゃあ、ミラ・・そろそろ学校に行かない?お父さん、おばあちゃん、おじいちゃん行って来ます。」
「昨晩はお世話をお掛けしました。ありがとうございました。」
「どういたしまして、またいつでも泊まりに来てもいいわ・・・スンスクの生徒としてではなくて、ミレの友達としてならいいと思うわ。スンスクは真面目すぎるから、つまんない先生でしょ?」
「そんな事はありません・・先生は・・・・」
チラッとスンスクを見るが、スンスクはいくら鈍感と言ってもハニに自分の気持ちを知られない様に、新聞を読んでいる振りをした。
「いい子ね。ミラちゃんって・・・・・ミラと同じ名前も何かの縁かもしれない・・・私、あの子がとても気に入ったわ。出来れば・・・・」
「お母さん、行って来ます。」
ハニの長くなりそうな話を、スンスクは遮るように、いつもよりも椅子を引く音を大きくして、玄関で靴を履いているフィマンと一緒に家を出て行った。
「ねぇ、スンジョ君・・・例のお見合いの話し・・・・」
「急ぐ事はない。スンスクも、お前と似て頑固なところがあるから、それとなく出会いの設定は考えてあるから。」
「頑固って言いますけどね・・・スンジョ君みたいに間違ったお見合いはしない子よ。」
ムッとしたスンジョの顔を見て、ハニは言ってはいけない事を口にした事に多少心が痛んだ。
あの時の事は口に出して言わない。
そう約束をしていたが、時々何も考えずに口にしてしまう。
自分でもあの時の辛さは一生忘れる事が出来ないのに、スンジョを困らせたい時によく言ってしまう。
「お母さんの食事を持って行って来ます。スンジョ君、今日の予定は?」
「病院に行って、ホン・ミニョンさんの様子を聞いて来るよ。」
スンジョはその帰りに、大学の後輩である外国語学科教授のソン・ジョンオンに会いに行くつもりだった。
ハニに余計な事を話せば、また面倒な事になる。
スンスクの再婚の話しも、ある程度時期を見てからハニに話すつもりではいた。
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