スンスクの春恋(スンスク) 120
「教頭先生・・・定時で上がらせていただきます。」
「ペク先生は真面目ですね。定時で帰って、家で寛いでください。」
スンスクは定時で学校を出た事は、ミラが生きていてまだ小さいミレの世話をする為に帰っていた15年前の時以来。
まだあの頃は、ミラはギャッジアップをして、ミレを抱いたり本を読んだりする事が出来た。
出来るだけ自分がミラとミレの世話をしたいからと、授業が終わってその日にやらなければいけない仕事をこなして帰宅していた。
ロイヤルホテルは、スンジョが大学時代の後輩や病院での後輩医師や教え子たちと時々利用するホテルだ。
ラウンジのホールスタッフにスンジョの名前を言うと、直ぐに窓側の席に案内された。
スンジョと約束をしていたのに、案内された所にいた人は父ではなく人形のように綺麗な顔をした女性だった。
「あの・・・・」
「ペク・スンスクさん?」
その女性は立ち上がると、右手を出してニッコリと笑った。
「初めまして、ソン・セイラです。」
「ペク・スンスクです。」
やはり思った通り見合いだった。
いつもなら父と母がいて、自分が着席をして暫くすると見合い相手が来る事を知らされる。
相手が来る前に、子供じみているとは思っているが、見合いをしないと言って立ち去ってしまう。
こんな風に、見合いの相手がすでに待っていたら、そんな子供じみた態度は取れない。
「スンスクさんは父をご存知ですよね?」
「父?」
「パラン大外国語学科ソン・ジョンオン。」
「ソン教授のお嬢様ですか?」
「お嬢様だなんて恥ずかしいわ・・・もう32歳なんですもの。」
不思議な色の瞳に、亜麻色の長い髪の毛。
「ソン教授は父の後輩で、大学時代教授の授業を取っていました。」
「スンスクさん、私の事を覚えていないですよね?」
「セイラさんはあの時は、中学生でしたよね。父と一緒にお邪魔した時にお会いしました。」
あの時はセイラの母親の母国から、サマーホリデーで父に会いに来ていると言っていた。
「一目惚れをして、直ぐに失恋をしたのですよ。スンスクさんは既婚者で子供もいると父に聞いて・・・見掛けに寄らず、遊び人なのかしらと思ったわ。」
「あの頃の僕は太っていましたからね。」
あの時は、家で待っているミラとミレが気になって仕方が無かったが、父と一緒に来たのに一人で帰る事が出来なかった。
「それにしても、父はどこに行ったのでしょうね。セイラさん一人を置いて・・・・」
「スンスクさんはご存じないのですか?」
「え?」
「私の父と式場を見に行ったのですよ・・・」
「式場?」
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