スンスクの春恋(スンスク) 126
「本当にそれでいいのか?」
スンジョは今のスンスクを見ていると、会社の為にと言ってヘラと見合いをした時の事を思い出す。
あの時の自分は、ハニへの想いに気がついていたが、今のスンスクのようにその想いを小さな箱の中に閉じ込めようとしていた。
その事でどれだけハニを傷つけ泣かせたのか、今でもそれを思い出すと、ひどい人間だと思っている。
「スンスクは、お父さんとお母さんの昔の話を知っているのだろ?」
「はい、スンリ兄さんから聞いています。」
「ミラと結婚を決意した時のスンスクは、お父さんは立派だと思う。今回の見合いも確かに、話を進めて行くつもりでソン教授とは何度も会ったし、セイラさんの気持ちも確認をした。まだ亡くなった妻を忘れていないスンスクでもいいからと言ってくれた事は、本当にありがたいと思う。スンスクにも他の兄妹のように、好きになった人と結婚をして欲しいが、さすがに教え子とは結婚をしろとも言えないし、そうなってもお父さんは賛成できない。それは判るだろ?」
「勿論です。」
「自分の娘の友達と恋愛をして結婚する人はいるが、ミレだけじゃなくフィマンの中ではお前は立派な父親だし、ミラちゃんはミレにとっても大切な友達だ。彼女を傷つけないように、彼女の為を思うのならちゃんと心の中を伝えて、再婚をどうするのか決めなさい。」
判っていた。
今はまだ子供のミラだ。
父親を知らずに育ったから、自分を一人の男として見たいのかもしれない。
ミラを見た時に、亡き妻のミラと出会った時を思い出したのは、同姓同名だからなのかもしれない。
恋愛らしい恋愛はミラとだけで、高校を卒業してすぐに結婚をしたが、後悔をした事は一度もない。
セイラさんは自分にとって、とてもいい人生のパートナーになるだろう。
明るくて元気で、母のハニとよく似ている。
もう一度、恋をして人生を楽しむのか、心が安らげる夫婦だけの時間が欲しいのか迷うが、もう一度恋をして、それが許されない恋なら、傷付くのは自分ではなく相手だ。
スンスクは机の上にある、結婚式の時の笑顔のミラの写真に話しかけた。
「ミラ・・・・君ならどうする?君が望む人生を僕は過ごして行くから。」
聞こえるのは耳ではなく、心の中でミラがスンスクの言葉に応えてくれた。
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