スンスクの春恋(スンスク) 127
セイラと学校から少し離れたカフェで待ち合わせをした。
ミラに見られたくないと言うのではなく、生徒たちに女性と会っているのを見られてはいけないと思ったから。
大きなカフェではなく、民家を改造して作った数席しかないカフェ。
入口は自動ドアでもなく、ドアベルも付いていない普通の家の玄関から入ると、セイラはテラスで本を読みながらコーヒーを飲んでいた。
太陽の光に透ける明るい髪の色。
象牙のように白い肌に、ページをめくる細い指。
仕草の一つずつが、映画のワンシーンのように綺麗だ。
「待ちましたか?」
「いいえ・・・」
この間初めて話した時よりも落ち付いた話し方をした。
明るい瞳の色が、ガラスのようにキラキラと輝き不思議な色をしていた。
「どうかしました?」
「綺麗な瞳の色ですね。」
「そう?猫みたいで嫌いなんですよ。」
店員がオーダーを取りに来ると、スンスクもコーヒーを頼んだ。
「僕でいいのですか?」
不安そうにそう聞くスンスクに、セイラはクスッと笑って静かに応えた。
「スンスクさんがいいの・・・・ずっとスンスクさんと会いたかったの。」
「お見合いってこんなもんなんですか?」
「え?」
「結婚を前提に会うのに、僕みたいに女性と話す事が苦手な男だと、結婚をしてもセイラさんが退屈をしてしまうのじゃないかなと思って。」
細くて長い指がコーヒーカップを持って少し飲んだ。
「30を過ぎた女ですから、何人かの男性とお付き合いもした事があります。これは父には内緒ですよ。でも、どの人も私と合わなかった。普通の静かな家庭。夫がいて子供がいて・・・・私、父と離れて暮らしていた時期があったから、そんな普通の家庭の生活に憧れて。スンスクさんとなら築けると思うわ。」
普通の家庭に憧れているセイラさん。
彼女を裏切っているかもしれない。
僕の心の中にいる教え子のミラ。
大丈夫だ。
きっとセイラさんと、彼女が望む家庭を築ける。
生徒が学校の先生を好きになるのはよくある話じゃないか。
彼女が僕の奥さんになると言ったのは、思春期の女の子が起こした錯覚。
「今度の日曜日、家に来ませんか?娘のミレと息子のフィマンを紹介します。」
子どもの為の再婚ではなく、自分の為の再婚。
自分の子供と同じ年齢の生徒と危険な恋愛をしていいわけじゃない。
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