スンスクの春恋(スンスク) 128
どこで誰が見ていたのか、スンスクが女性と一緒にいる所を見たと学校中の噂になっていた。
「ミレのお父さん、なんだかすごく美人な人とお茶していたって本当?」
誰も、いつもミレと一緒にいるミラの気持ちは知らないし、一応ミレもミラの気持ちに気づいていない振りをしていた。
「さぁ・・・・私は何も聞いていないけど。」
それ以上は聞かないで欲しいと判るように、顔を上げずに授業前のこの時間に、教科書を開いて目を通していた。
「なんだかね・・・・モデルみたいで凄く綺麗な人だって。あの堅物で亡くなった奥さんをずっと愛していたペク先生が意外だと思わない?」
「父は堅物じゃないわ。冗談だって言うし、母が亡くなってからずっと想い続けているのとそれは違うわ。」
早く向こうに行って欲しかった。
ミラの気持ちをみんなは知らないから、こんな風に噂話をするのだろうし、お父さんだって一人の男でまだ30代。
いつまでもお母さんを想い続けて再婚しない訳じゃないから放っておいて欲しい。
お父さんの為とミラの為を思うと、その話が本当なら上手く行って欲しい。
ミラは嫌いじゃないし、いい友達でいたいけど、お父さんと気持ちが通じていたにしてもそれは私には認められない。
お父さんは大好きだけど、お父さんの好きな人になる事だけは嫌。
「ミレ・・・ペク先生の話し・・・本当なの?」
「本当かどうか、私は何も聞いていないし、本当ならきっと父の方から話してくれる。」
「そう・・」
「ミラ?ミラは私のお父さんの事を好きなんでしょ?」
ずっと前から気がついていたが、それを直接聞いた事はなかった。
「私・・・・・」
「言わなくても判っているよ。お父さんの授業での様子と他の先生の授業の時のミラは違うもの。でもね、お父さんはみんなが言うとおり、お母さんだけを愛しているから、ミラには可哀想だけど、諦めた方がいいよ。」
ちょっと意地悪な言い方だったとは思う。
お父さんの気持ちを私は気がついているけど、それをあなたに伝えたくない。
誰ともお見合いを一度もしなくて、ずっとお母さん一筋だったお父さんが、誰かとお茶を飲んでいたら本当はそれも複雑だけど、お父さんが苦しんでいるのじゃないかと思えばそれはそうした方がいいのだと思う。
お父さんが、他の女性と会っていたのはきっとお父さんもミラへの気持ちに気がついて、それを吹っ切るためだと思うから。
だって、おじいちゃんに次ぐくらい優秀だと言われていたお父さんが、医者にならずにお母さんがなりたがっていたパラン高校の国語の教師になったのだから、生徒と噂になったりしたらお母さんを裏切る事になる。
「ミラ・・・噂が本当なら、私はお父さんを応援するよ。」
グッと体に力を入れたミラを見る事なく、次の授業が始まるベルが鳴るとミレは自分の席に着いた。
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