スンスクの春恋(スンスク) 129
「気になる?」
「・・・・」
「ミラに話さなかったわけじゃないよ。私も知らなかった。」
帰り支度をしながらミレは、ほとんど一日誰とも口を利かなかったミラに話しかけた。
お父さんの噂を聞いて、泣いていた事は知っている。
泣いてもどうする事も出来ないし、友達としてはミラは好きだが父の恋人になる事は嫌だった。
ふたりの気持ちを知っている自分のこの態度はよくない事は判っていても、父もミラも気持ちを知らないままで終らせた方がいいと思っている。
「今日は私と話したくないの?」
「・・・・」
腕を掴むと、その手をミラは叩くように拒んだ。
「私・・・先生の事本気・・・先生にも告白をした。ミレは私の気持ちを知っているよね・・・・知っていたら・・・」
「知っているけど、ミラとお父さんを取り持つ事はしないから。意地悪かもしれないけど、お父さんは今まで一度だけ恋愛をしたわ。初恋がお母さんで高校を出てすぐに結婚をした。それはお母さんが長く生きられないから・・・・」
「同情じゃないの・・・・・」
「ミラは知らないでしょ?お父さんが教師になったのはお母さんの夢を叶える為。私のおじいちゃんはパラン一の天才と言われた人。おじさんやおばさんも優秀な人だったけど、私のお父さんはおじいちゃんに次ぐくらいに優秀だった・・・本当ならきっとお父さんも医学部に行くはずだったけど、お母さんの病気の事を思って行かなかった。判る?その理由・・・・」
「知るわけないでしょ・・・」
これはスンスクから聞いた話ではなく、祖母のハニから聞いた話だった。
ペク家は本人の考えを尊重するが、誰もがスンスクも医学部に行くと思っていた。
「医学部に行って医者になったら、お母さんの病気の事をもっと知る事になる。知ってしまえばお母さんもお父さんに色々聞くから、知らなければ知らないでその方がお母さんと少しでも幸せに暮らせると思っていたの。絶対に子供は望まないとおじいちゃんたちと約束をして結婚したけど、好きな人の子供を生みたいと言うお母さんの願いを叶えて、私とフィマンが産まれた。お腹に子供がいる時は薬が飲めないから、それが影響して病気の進行が早まる事は判っていた。一秒でも長く生きていて欲しかったのは、私たちよりもお父さんの方。」
ミラはミレの話を聞いていても、顔を見ようとしない。
ミレは言わないでいようと思っていたが、ミラを傷つける事になるかもしれないが、スンスクへの気持ちを諦めてもらうために、勇気を出して言う事にした。
「はっきり言うわ。ミラがそんな態度なら、私はミラとの友達関係も辞めてもいい。」
ピタッと足を止めたミラは、ミレの方を振り向いた。
「そんな態度って・・・・」
「ミラとお父さんを取り持たない理由・・・・ミラのおじさんに聞くと判る。私のお母さんがお父さんと結婚前に婚約していた人・・・・・お母さんの病気が判って、ミラのおじさんはお母さんを捨てて別の人と子供が出来て結婚をした。」
ミラは身体の血がなくなるように、頭がくらくらとして来た。
衝撃的な事を親友のミレが言う事に驚くよりもショックだった。
「お・・・おじさんの子供・・・私よりも年下だよ?その時に産まれていたら、私よりも年上のはず・・・」
「あのおじさんに聞いてみたら?事実だと判ったら、お父さんとあなたの事は無理だと判るでしょ?お母さんは自分の病気を知ってショックを受けている時に、励ますどころか別れ話をした人がミラのおじさんだから。そんな人の親戚になるのは、お父さんもだけどうちのおじいちゃんたちやお母さんの実家のおじいちゃんだって反対するしいい気持ちはしない。だから判って欲しいの。」
ミレはミラの実の父親が誰かは知らない。
母親が結婚をしたら、あのパク・ジフンが伯父ではなく実の父親だと人に知られてしまう事もある。
スンスクが他の誰かに話す事は無くてもミラに知られたりしたら、今のこの話しを聞いただけでもその時の事を考えるのが怖かった。
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