スンスクの春恋(スンスク) 130
私は何て意地悪な子だろう。
お母さんの元婚約者がした事とミラは何の関係もないのに、大切な友達を傷つけるような事を言って、お父さんがまだ若い時から、おばあちゃんたちの手伝いがあったにしても、再婚もしないで私とフィマンを育ててくれた。
お母さんが亡くなった時だって、お父さんはまだ二十代半ば。
お母さんを想い続けているお父さんが好きだったけど、もう私もフィマンも小さな子供じゃない。
今まで他の女性と恋愛もしないで私たちの為に頑張ってくれたから、これからの人生は自分の為に過ごして欲しい。
でも、ミラだけは嫌だと思った。
なぜだろう・・・・
ミラは私の親友なのに、どうしてそう思うの?
いい子なのに・・・
何も話さなくても気持ちが通じるくらいにいい子なのに
その大切な友達に傷付ける事を言うなんて。
ミレは、置き去りにして来たミラの涙に責任を感じた。
唇をギュッと噛み締めて、そこから逃げる様に全速力で走り出した。
<ミラに謝ろう>
立ちすくんでいたミラと別れた場所に戻ったが、そこにはもういなかった。
バス停まで一緒に行って、そこからミレは地下鉄に乗りミラはバスに乗って帰って行く。
いるはずのミラがそこにいない事に、急に不安になって来た。
自分にとっても大切な親友で、外部から来たミラにとっても大切な友達のはずのミレだった。
どこに行ったのだろう。
家に帰るにはバスに乗らなければ、歩いても結構時間が掛る。
お父さんに、ミラに酷い事を言った事を話して一緒に探してもらわないと。
ミレはスンスクがまだ残っている学校に急いで戻った。
ミラと別れた所から学校まで5分もかからない所なのに、一時間もかかるくらいに遠く、走っても足が重くて前に出て行かない。
正門の扉は閉められ、学校の中に入るには教職員用の駐車場入り口でもある裏門しかない。
ぐるりと塀伝いに裏門に入ると、スンスクが髪の毛が長くてモデルのように背の高い女性と話していた。
あの人が皆が話していた、スンスクとカフェでいた女性だと直ぐに判った。
「お父さん・・・・・・」
ふたりが親しそうに話している間に割り込むように声を掛けるのは気が引けた。
「ミレ・・家に帰らなかったの?」
スンスクがミレにそう声を掛けると、スンスクと話していた女性が振り向いた。
「あっ・・・・」
鼻筋が通り長い睫の奥に見える不思議な色の瞳。
人形のように綺麗なその人の顔に、初めて見る父の一人の男性としての表情にドキリとした。
「ミレに今度会ってもらおうと思っていたんだよ。ソン・セイラさん・・・お父さんが大学時代に取っていた授業の教授の娘さんで、おじいちゃんもよく御存じの方だよ。」
「大丈夫よ韓国語で・・・・私は半分韓国人だから。初めまして・・・ソン・セイラ。セイラと呼んでね?」
「ペク・ミレです・・・・」
ミレはスンスクが急に遠い存在に感じた。
「お父さんの彼女?」
スンスクとセイラは驚いた顔をした。
違うと言えば違うし、お見合いをして話を進めていくと決めたのだからそうと言えばそうだ。
「彼女・・・って言ってもいいのかしら?」
セイラはスンスクの顔を見て、どう返事をしたらいいのかと言う顔をした。
「お父さん、セイラさんとお付き合いを始めたばかりだよ。ミレとフィマンに会わせてから、ちゃんと話そうと思っていた。セイラさんがミレとフィマンのお母さんになってもいいかな?」
「お母さん・・・・・再婚するって事?」
「多分・・・ダメかな?」
「私はもう大きいし、お父さんが決めた事だから。でも・・・・フィマンは?」
違う。
フィマンは?じゃなくて、ミラへの気持ちはどうするの?って、聞きたかった。
そこにセイラさんがいなかったら、きっと聞いていたかもしれない。
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