あなたに逢いたくて 22
「に・・・妊娠しているのですか?ハニ・・・娘が・・・」
「パパ・・・ごめんなさい・・・・・」
「何か精神的なショックもあって、ツワリと神経性の胃炎が重なっていたと思われます。食事も摂れていないので、栄養状態も良くないですし、このまま自宅で療養を希望されましたが、流産をしてしまう可能性もあります。その危険性があるのに退院を医師として指せることが出来ませんので、暫く入院して処置を続けた方が良いと思いますので、入院手続きの方は看護師に説明していただきますね。」
ギドンは医師から告げられた、突然のハニの妊娠に驚いた。
スンジョからの結婚を考えた交際、その後すぐに友人スチャンが倒れてハニとは結婚が出来なくなったこと。
ペク家を出ようと考えていた時に、ハニが倒れて妊娠が判った。
何もかもわずか一ヶ月の中で起きた思いもよらない事に戸惑った。
「オ・ハニさんのお父様。これから入院の説明をしますね。」
ギドンは看護師からの説明とハニと自分の希望で、病室を総合診療棟の婦人病室にすることにしてもらった。
同じ病院にスチャンが入院しているので、グミやスンジョにもハニの妊娠が判ってしまうことを恐れてのためだった。
「ハニ・・・すまんな。産科病棟だとスンジョ君やスチャン達に判ったら、折角の縁談にヒビを入れてしまう。ハニもワシもあの家を出るつもりだったから余計な心配はさせたくないんだ・・・・・」
やつれてしまった娘の頬を労わるようにそっと触れた。
結婚をして妻になり、落ち付いたら子供を持つと思っていたから、破談になってしまった今は、その子供をどうするのかと聞く事も出来ない。が、ハニがどうするのかは、ギドンには判っている。
「パパ・・・・ごめんね。結婚もしないのに赤ちゃんが出来て・・・・・さっき先生に言われるまで、お腹に赤ちゃんがいる事を知らなかった・・・・・・」
「産むのか?産みたいか?スンジョ君は他の人と結婚するんだぞ?」
ハニは判っている、スンジョと結婚は出来ないことを。
それでも、スンジョとの思い出があればそれだけでも生きていけると思った。
「産んじゃだめ?田舎のおばあちゃんの所に行くから、スンジョ君たちにも判らないから・・・・産みたい・・・。結婚もしないで子供を育てるのは、不器用で何事も満足に出来ない、私には子供を育てると言う事はとても大変だと判っているけど、折角神様からの贈り物を無くしてしまうのは嫌なの・・・・・・・・・・。」
「いいよ、ワシが世間体を気にする男に見えるか?ママが死んでから、何度も再婚話を断って世間からはバカな男だとか、まともに娘が育てられるかとか言われたんだ。それなのに、こんなにかわいらしい娘に成長させることが出来たんだから・・・・・・・・未婚で母親になっても、何も気にすることはない。ハニはスンジョ君が好きだったから、子供を授かることが出来たのだから。おばあちゃんの所に行って産みなさい。」
婦人科の病室に移り、ひと段落が付いて眠ったハニを残してギドンはスチャンの病室に向かった。
一方スチャンの病室では、スンジョとスチャン、グミがスンジョのお見合いについて話し合っていた。
「スンジョ、結婚というのは相手の人が気に入ってお互いに信頼し合える人とするもんだぞ。」
何処か遠くを見るようなスンジョの視線を気にしながらスチャンは話した。
グミはグミで、良くなったとはいえまだ体調が心配なスチャンを気にして、ハラハラとしていた。
「気に入っているよ。同じ理工学部でだしテニス部でも一緒だったから・・・・・・」
「ハニちゃんはどうするんだ?ママに聞いたよ、ワシが倒れなきゃ結婚するつもりだったんだろ?会社のためならスンジョは気にしなくていい。住んでいる家を担保にすることだって出来るし、方法はいくらでもあるんだから。結婚は好きな女性としなさい。」
何も言わないスンジョにグミは口を開いた。
「スンジョ・・・・・ハニちゃん、ギドンさんの田舎のおばあさんの所に行くのよ。このままでいいの?あんなに食事も喉を通らないほどにやつれて・・・・・・ハニちゃんの太陽のように明るい笑顔を戻してあげてくれない?」
ハニが出て行く?
田舎のおばあさんの所って、国境に近い孤島だって言っていたあの田舎?
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