あなたに逢いたくて 23
「親父は、心配しなくてもいいから。人のためにすることは、別に医者になることばかりではありません。それに、オレは会社に犠牲になったとも思っていない。きっとオレの本当に望むのはこの道なのかも知れない。親父がオレに継いでほしがっていただけ会ってやりがいを感じているよ。」
部屋をノックする音がし、ウンジョがドアを開けるとギドンが立っていた。
「おじさん!」
「おお、ギドン。中に入ってくれ。」
家族が集まっている中に入るのに少し気が引けたが、ハニが気が付いて今は落ち着いている事を言わない訳にはいかない。
「ギドンさん、ハニちゃんの具合は?」
いつもとおりの変わらない様子を装いながら、ギドンはハニを担当した医師から聞いた事を話した。
「神経性の胃炎で体力が戻るまで大体ひと月位の入院になりました。なんて言うんですかね・・・年頃の娘っていうのは、外見が気になるのか、ダイエットしようと食事を抜いていたらしいんですよ。そんなことしていた時にスチャンが倒れて、家事を任されたのが負担になったらしいんですよ。料理人の娘なのに料理が作れなくて神経を使ったんですね。」
グミはギドンに申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんなさいね、ギドンさん・・・・・ハニちゃんに私たち甘え過ぎていたのよね。素直でとてもいい子だがら、本当の自分の娘に・・・・・・・・」
グミは涙ぐんでしまいとても言葉にすることが出来なかった。
「奥さん、それは違います。ワシ等親子は奥さんのお気遣いに慣れてしまっていたんです。ハニも田舎に帰ることを納得したので体調が良くなったら挨拶に来ますので・・・・・」
ギドンは目を瞬いていたがスンジョの目を見、手を取りハニの思いを伝えるように
「スンジョ君、幸せになることをハニと願っているから・・・・・・・・スチャン、荷物は少しづつだけど運び出して退院後は店の二階に移るから・・・・・秋になって、冬が来る前に田舎に行かないと雪が深くなるとお袋も困るから・・・・・・・本当に長い間世話になったよ、ありがとう。」
スンジョはギドンからの決別ともとれる言葉を耳にして初めて気づ
傍にいて楽しい女の子ではなく、自分の傍にいなくてはならなくて、本当の自分でいられると感じるためには必要な存在だった。
スンジョは、面会時間がとっくに過ぎた頃にハニの様子を見に来た。
婦人化病棟のハニの病室の前に立つとそっとドアを開けた。
夕日がかかるハニの顔は、とても綺麗で時間が止まっているように動かず、まるで息をしていないように見えた。
静かに近づいて、そっとハニの顔に近づき少し半開きになったふっくらした唇に口付けた。
最後にハニの唇に触れたのはいつだったろうか・・・・
スンジョはもっともっとハニを深く感じたかった。
ふとした時に目を開けると、目じりからハニの綺麗な涙が一筋流れた。
どんなに愛しても 叶うことがない
愛もあることなど
気づきもしないほど あなただけ・・・
あなただけを ただ見つめてた
私のすべてをかけて 愛した
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