あなたに逢いたくて 24
気が付いたら あれから半年の時間が流れていた
気持も落ち着いて、やっと笑えるようになって来た
何かを忘れるように 毎日 忙しくしている
戻れない関係だから 新しい人生を私なりに歩いている・・・・
あれから半年・・・・
スンジョ君は、おじさんが退院をして落ち着き、ゲームソフトが完成した時に会社を辞めて、復学手続きをして学校に戻った事をパパから聞いた。
おばあちゃんの所に行く事が決めていた私は、出来る限りスンジョ君の姿を脳裏に焼き付けようと医学部の校舎に来てはスンジョ君を見ていた。
スンジョ君と話すことも無く、物陰から見てはドキドキしていた片想いの高校生の頃を思い出す。
スンジョ君が笑っている姿を見ることが出来ると、なんだかその日一日は嬉しかった。お腹の中の赤ちゃんにも時々<あなたのアッパだよ>って教えてあげた。
あまりじっと見ていると、スンジョ君が気が付きそうで、見られている事に気が付いて視線を動かすのが判ると、心臓をドキドキさせながら隠れた。
スンジョ君とヘラが付き合っていると言う事は、ほとんどの学生が知っていて、大学を出たら結婚するらしいという噂はあったけど、まだ婚約は先伸ばしになっていることを聞いた。
おばさんが二人の結婚に対して大反対していた、まだ認めたくないと言っている話をパパから聞いた。
おじさんとおばさんが店に時々来ては、私に会いたがっているとパパから聞いたけど、田舎の大学の転入試験を理由に一度も会わなかった。
試験勉強も、スンジョ君に勉強の仕方のポイントを教えてもらったのが役にたち、信じられないけどこの私が一度で無事に試験に合格した。
そして、ついに明日はソウルを離れる日。
パパのお店をミナとジュリそしてジュングが借り切って、懐かしい7クラスの皆が送別会を開いてくれる事になった。
ソン先生は、私たちが高校を出てすぐに1クラスのソン先生と結婚して、赤ちゃんがもうすぐ産まれるということだった。
先生みたいに普通に結婚をして、堂々と産まれる子供の事を話が出来ることが羨ましかった。
それでも私の赤ちゃんは、大好きなスンジョ君の子供だと思うととても幸せだった。
私の妊娠を知っているのは、パパを含めて四人。
ジュングが、私がスンジョ君の子供を妊娠していると言う事を知った時は、
「ペク・スンジョを許さん!」
と大騒ぎをして大変で、お腹の子を自分の子として引き受ける、とまで言ってくれた。
ジュングは嫌いじゃなかったけど、私にはジュングとの結婚を考えることは出来ない。
「パパ、ちょっと出てくるね。おばあちゃんに持って行くお土産を忘れていたの。」
「気を付けて行ってくるんだぞ。」
「ハニやぁ~、送っていったろか?」
「ジュング、お前は送別会の片付けをやれ!ミナちゃん、ジュリちゃんハニを頼むな。」
ジュングは、何かと私のそばにいたがった。
「ハニ、本当に行っちゃうんだね。」
ミナとは、スンジョ君の家を出てからふたりで大学の校舎の陰から一緒にスンジョ君を見ていた。
ミナはハニの少し膨らんだお腹を悲しそうに見ながら、
「ペク・スンジョに言わなくていいの?」
「そうだよ、妊娠していることを知らないと言っても正真正銘、ペク・スンジョの子供の父親だよ。」
ハニは二人の言葉にただニッコリと、笑うだけだった。
最近、笑顔を見せて明るくなったハニとは対照的に、スンジョはハニと付き合う前の心を閉ざして感情を見せないスンジョに戻っていた事にハニは知っていた。
買い物が終わったハニは、ミナたちと別れてひとりで歩いていると、無意識のうちにいつの間にかスンジョが住んでいたマンションの前に来ていた。
スンジョのマンションに来ていた時を思い出しながら、集合ポストの名前を見ると、スンジョはまだこのマンションに住んでいた。
あの頃は、当たり前のように郵便物を確認してスンジョと一緒にエントランスを通りエレベーターに乗って部屋に行っていた。
このマンションに来て思い出すのは、スンジョとの甘い時間。
スンジョと初めて結ばれた場所。
決して愛しているとか好きだとかは言われなかったけど、スンジョがハニにだけ微笑んだり心を開いていてくれたことは判っていた。
マンションのエントランス入口のドアが開き、風と一緒に大好きなあの人の香りを感じた。
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