スンスクの春恋(スンスク) 139
この日記は、私にプロポーズをしてくれた日から書く事にしました。
パク・ジフンと婚約を破棄して、私は未来を見る事がなくなった。
こんなはずじゃなかったのに、どうしてこの病気に罹ったのだろう。
ジフンは人に言わせれば、信用が出来ない男。
知っている。
私の他に別の女性と付き合っている事も。
私が教師になったら結婚しようと言ったのは、彼の真実の気持ちだった。
でも、私は長く生きられない。
絶望の時に、教育実習で行った母校の受け持ちのクラスは、信じられないけどエリートの1クラス。
授業は失敗ばかりだけど、スンスクだけが真剣に聞いてくれていた。
あの頃から惹かれるものがあったのか、スンスクが真剣に聞いてくれるから、教壇に立つ事が出来たのかもしれない。
もうあれから20年近く経つ。
スンスクは、校内でよく転んでいるミラを見て、ただそそっかしいだけの人だと思っていた。
でも、その転ぶと言う事が病気の前触れだったのかもしれない。
一ページずつ読んで行くと、自分のプロポーズを受けて、夢にまで見た結婚式の事。
お腹の中で育つ、小さな命への夢と未来。
そんな事が綴られていた。
自分が目にしていた日記とは違って、いつか自分がいなくなった時に、スンスクが読んでくれるように書いているみたいだった。
「国語の教師を目指していたのに、綴りが間違っているし、文法がおかしい・・・・採点をするとD-(ディーマイナス)だよ。」
いつこの日記を書いていたのか知らなかった。
きっと、一日ベッドで過ごす時間が長くなった時にも続けて行けるように書いていたのだろう。
「こんな事を書かなくてもいいのに・・・・僕が見る事を判って・・・・」
スンスクはキスしかしてくれない。
ミラが生まれてから病気も進行しているからと言って、全然私の身体に触れようとしない。
病気になったって、普通に性欲はあるよ。
私から誘って、10回に1回。
女の幸せを欲しいのに・・・・・
時々、スンスクの真面目さに退屈する時がある。
比べてはいけないけど、ジフンは不真面目すぎて、心配な事もあったけど、スンスクにもそう言うところがあって欲しい。
私がいなくなったら、どうするのだろう。
19歳で結婚をして、初恋もしていないし、勿論誰かと恋愛をしていたようには見えない。
私が初めての女性だったでしょ?
この日記を見ている時は、誰かと恋愛をしているかもしれない。
私以外の女性と、素敵な人生を送ってね。
スンスクの長い人生、私だけを想ってくれるのもいいけど、きっと私が死んだ時でもまだ20代だし、ミレが高校生になった時でも30代。
フィマンが生まれる前だ。
文字の乱れはあるけど、まだミラが書いている文字だ。
今日、スンスクに言おう。
もう一人子供が欲しいと。
私が死んだら、スンスクが寂しくならない様に、ミレとスンスクによく似た子供とスンスクで頑張って過ごして。
そして、子供達が手を離れて、自分の時間が持てるようになったら、もう一度恋をして。
その後からは、一日に数行ずつの短い日記になっていた。
フィマンがお腹に出来た頃は、お母さんが代筆をしているけど、決まって書かれているのは同じ言葉だけ。
話す事も辛くて、その言葉をお母さんが聞き取って書いているけど、違って伝わっているのか、お母さんが何度も書き直している。
スンスク、もう一度恋をして
そして、その人と幸せになって
その二行の言葉が、フィマンが生まれる前日まで書かれていた。
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