スンスクの春恋(スンスク) 141
ミラは来ていなかった。
手首の傷よりも、自分を傷つけたいと言う気持ちがあるのなら、暫く学校を休んでいてもいいかもしれない。
高校一年の今の時期は特に試験もなければ学校行事もない。
普段はあまりいい事だと思わない、1クラスの仲間に何かあったのではないかと他人を心配しない事が、今のミラには立ち直るにはこのクラスの性質は環境的にはいいと思う。
淡々とその日の授業が進み、何事も無く学校での1日は終わった。
生徒ひとりいないだけで何かもの寂しさも感じるが 、病欠する生徒がいる事もあるから、そんな寂しい感じを思うのは不思議な気分だ。
「お父さん・・・・」
授業で使う本を図書室で探していると、ミレが何か言いたそうに近づいて来た。
ミレが学校で『お父さん』と呼ぶ事は滅多にない。
他の生徒がいないのを確認すると、スンスクは一番奥の机の所に連れて行った。
「座って・・・・・」
スンスクはミレが聞きたい事は大体判っていた。
自分が言った事を父がどこまで知って、ミラはその事をどんな風に言ったのか気になっていた。
「ミラ、私の事を何か言っていた?」
「彼女は、他人に何か言われてもそれに付いて何かをまた別の人に言う女の子じゃないだろ。」
「うん。」
だからあんな事をして自分を傷つけたかったのだ。
「ミレがミラに何を言ったのかはお父さんは聞かないけど、ミラは自分の出生の秘密を気にしている。」
「出生がどうであれ、私は気にしないのに・・・・・」
「それは判っているよ、お父さんも気にはしていないけど、ミラが気にしていてね・・・・・理由がそうなのか知らないけど、ミレだけに言うよ。」
「私にだけ?」
「とっても難しい事情だからね。」
ミレになら話しても大丈夫だとスンスクは思っていたし、今ミラに必要なのは恋人とかじゃなく、自分の心の中を知ってくれる友人だ。
「ミレは、パク・ジフンに会った事があるよね?お母さんの元婚約者。」
「うん・・・・」
「ミラは、その人の子供なんだ。」
思っていたよりもミレにとっては衝撃的な事だった。
「ちょうど、お母さんとお父さんが結婚した頃だろうか・・・・ミラのお母さんとパク・ジオンさんがお付き合いしていた時に、家に遊びに行ったそうだ。ジオンさんはいなくて、そこにいたのは兄のジフンさんだった。」
ミラの母親とジオンから聞いた話を、ミレに話して少しでもミラを助けて欲しいと思った。
勿論、まだ高校一年生のミレに全部を話すつもりはないが。
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