スンスクの春恋(スンスク) 143
何も聞かない母に、ミラはイライラとした。
生まれてから16年の間一度も、そんな風にイライラとした事はなかった。
イライラとするのは心に後ろめたさがあり、それを誰かに叱咤されれば消えると判っているけど、ミニョンもジオンも何も言わない。
ただ一人、スンスクだけがミラに手首を傷つけた事に付いて怒りはしなかったが、その事に付いて話してくれたが、母親であるミニョンは何も言おうとしなかった。
「お母さん、私が何をしたのか判っているよね?」
「ミラ・・・・・」
「知っているのに、どうして何も言わないの?手首を傷つけた私を、誰も見つける事なく、そのまま・・・・・・」
ミニョンは何も言わずミラを抱きしめた。
「違う・・・・お母さんが、あなたが出来た時に、一緒に命を絶っていたら、誰も傷つかなかったかもしれないと思って、ずっと自分を責めていたの。ミラには小さい時からお父さんのいない生活をさせて、本当に可哀想な事をしてしまったと思って・・・・」
まだ体調が戻っていないミニョンをジオンはその細い肩を支えた。
「誰も悪くないよ。おじさんのお兄さんが一番悪いのかもしれない。でもね、ミニョンにもミラにも言っていないけど、おじさんはミラを赤ちゃんの時から見ているけど、ずっと自分の子供だと思って見ていたよ。それは、ミラはおじさんが大好きなミニョンが生んだ子供だから。パラン高校にミニョンが通わせたいと思っていたのを知った時、ミニョンと結婚をしてミラを自分の子供として育てて行こうと思った。思っただけじゃいけない事は判っていた。この国にいたらミラはきっと自分の生い立ちを知る事になるから、アメリカに移住しようと考えていた。」
「移住・・・でも・・・・」
「パラン高校に入ったからね・・ミニョンが願っていたパラン高校に。いつか言おうと思っていた事だけど、ミラが高校を出たら三人で移住しないか?おじさんは、自分の親にもちゃんと話して許してもらったよ。ミニョンがおじさんのお兄さんにされた事があるから、嫌な思いと断ち切って・・・・・どうだろう?」
ミニョンはジオンから話は既に聞いていた。
先日までいなかったのは、その為に出張をしていたのだから。
その話の準備が整った時に、ミニョンが体調を崩して入院をしたのだった。
「おじさんとお母さんがいいなら、私は別に構わない・・でもね・・・」
「でも?」
「お母さんが、幸せになるのなら出来れば早く結婚をして欲しい。小さい頃から、おじさんが来る時のお母さんは幸せそうにしていたのに、帰った後は淋しそうにしている。私がおじさんの事をお父さんと呼んでもいいのなら、早く結婚して欲しい。」
おじさんからお父さんになったら、ペク先生の事を諦められるかもしれない。
先生は好きだけど、私はミレと友達でいたい。
ミレがいるから、高校での生活が楽しいから笑っている事が気っとできる。
0コメント