スンスクの春恋(スンスク) 147
セイラと結婚に向けて、新居を見つけて家を出て行くのか、それとも今までどおり親と同居をするのかを決めなければいけない。
「スンスクさん、ミラさんのお墓に連れて行ってくださる?」
「いいですけど・・・」
「正式に婚約を披露する前に、ミラさんのお墓にお許しを貰わないといけないですよね?」
別に僕はそれはどちらでもよかった。
出来れば、本当はそうした方がいいのだろうけど、セイラがそこに行くとミラと心で会話をする事がもう出来なくなるような気がした。
「スンスクさん、よくミラさんのお墓に行っていらしたんですよね?」
「どうして・・・・」
「お義母様からお聞きしました。『スンスクは、親に何も話さないけど、ミラのお墓でお話をして来るの』って・・・・これからは私がスンスクさんの相談を聞けるようにしますね。」
複雑だった。
セイラと結婚したらミラと話をする事はもう出来なくなる。
僕にとってミラは母と祖母やスンミ以外で、唯一心を開ける女性(ひと)だったから。
一日おきにセイラとデートをして、これからの事を二人だけで進めていた。
自分にとっては再婚でも、セイラにとっては初めての結婚だ。
華やかな事は少し苦手だが、長い間自分を想ってくれたセイラに精一杯の気持ちで迎えてあげたい。
ウエディングドレスを選ぶ時に、車椅子に乗っていたミラが身に付けるが出来なかった長いヴェールに長い裾のドレス。
ハーフですらっとしたセイラが試着すると、モデルよりも綺麗に見えた。
薬のせいで顔がむくんでいたミラは、髪の毛を上げるのを嫌がったが、セイラが髪の毛を結い上げると白いうなじが眩しいくらいに綺麗だった。
「良かったのかな?セイラのご両親も、僕たちに任せると言っていらしたけど・・・・・」
「大丈夫よ。若い花嫁じゃないし、私の両親は気にしないわ。それよりもスンスクさんのお父様とお母様も、私たちだけで決めても何も言われないの?」
「うちはね・・・おばあちゃんが仕切っていたから、お父さんはそれが嫌だったから口出しはしないし、お母さんはお父さんの言うとおりの事しか答えない人だから。」
そう、お母さんはお父さんが言う事が全ての人だから、自分の考えをあまり言う人じゃない。
一度だけ自分の意見を言ったのは、僕がミラと結婚すると言った時だけだ。
昔のお母さんの事は知らないけど、お母さんはお父さんの意見が正解だと思っている人だ。
「ミラのお墓に行くのは、明日でもいいかな?」
「いいわよ?」
「明日、ミラの誕生日なんだ。その時にセイラを紹介するよ。」
「ありがとう・・・・それじゃあ・・・・」
海外生活の長いセイラだからなのだろう、家に送り届けるとキスをしてくれる。
最初は恥かしかったけど、回数を重ねると慣れる言う事なのか、今はセイラがしてくる深いキスにも特別に恥ずかしいとは思わなくなった。
0コメント