スンスクの春恋(スンスク) 149
「さぁ、帰ろうか・・・セイラ・・・・」
セイラの琥珀のような瞳から、水晶のような綺麗な涙が流れていた。
「涙が・・・・ごめんなさい・・・ミラさんの声が聞こえて・・・・」
セイラは堪えきれずに、両手で顔を覆って泣き出した。
スンスクの耳に聞こえて来るミラの声に、震えながら手を伸ばしてセイラの方に伸ばすと、そのままスンスクの胸に顔をうずめて声を挙げて泣き出した。
スンスク、そういう時は優しく女性を抱きしめてあげるの
私にはやれなかった事を、セイラさんにしてあげて
貴方は、お義父さんと同じで好きな女の人には不器用なんだから
「ミラさんの声が聞こえて・・・・」
「セイラにも聞こえたの?」
「ええ・・・私がスンスクさんを幸せにしますと伝えたら・・・・・・ミラさんの声は・・・・」
「喜んでいた?」
頷くのが精一杯だった。
セイラが初めてスンスクを見た時は、すでに結婚をしていたし報われない恋だと思って、諦めようと思い何人かの男性とお付き合いをしたが、スンスクの代わりになれる人には巡り合えなかった。
結婚を諦めて父のいる韓国に帰国し、父の大学時代の先輩でスンスクの父であるスンジョと再会した時に、言われた言葉をそのまま受け入れた。
「セイラさんは、スンスクのタイプの女性だけど、子持ち寡の所に来て欲しいとは言えないな。」
「行かせてください。お父様、おじ様、スンスクさんとお見合いを設定していただけませんか?」
勇気のいる一言だった。
スンスクがミラと結婚するまでの経緯を、父の所に来たスンスクが話しているのを聞いた事があったから。
若くに結婚して親になり、先の見えない妻の命を絶望的に考えずに、明るく生きて行く事を話していたスンスクが眩しく見えた。
「スンスクさん、私はミラさんの代わりにスンスクさんの血を受け継ぐ子供二人を大切に育てて行きます。私は自分の子供を生まなくてもいいですか?」
「それは・・・・・・・」
「ミラさんが命を懸けて生んだ子供が、私の子供だと思って・・・・・」
「それは神様に決めてもらおう。僕はセイラさんとの子供も欲しいよ。きっとミレもフィマンも弟や妹が誕生したら喜ぶよ。」
ミラのお墓参りは日帰りで行ける所にあるけれど、初めて二人で夜を過ごす事にスンスクは緊張をしていたし、セイラも緊張をしていた。
スンスクの大学時代を思い出すと、今とは違って不器用な青年だったが、今はとても優しくて素敵な男性になっていた。
スンスクがセイラを抱きしめると、セイラはスンスクの首に腕を巻き付けた。
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