スンスクの春恋(スンスク) 151
何度ミラに電話をしても、メールを何通も送信しても、連絡をつける事が出来なかった。
明日から夏休み。
夏休みの間に、お父さんはセイラさんと再婚をする。
そのまま、おじいちゃんの家に住むと言っているけど、お母さんと過ごしたあの部屋で、お父さんは別の人と新しい生活をして行くと、私はそう思っていた。
「明日から夏休みです。夏休みも来年までなので、精一杯高校生活を悔いの無いように過ごしてください。再来年の夏休みは、受験に向けて1クラスは大変な時期に入ります。担任が持ち上がるのが通例のパラン高校なので、その大変な時期になる前にみなさんに3つ報告をします。」
お父さん、みんなに再婚をする事を言うんだ。
スンスクは時計と教室の入り口のドアを見て、何かの時間配分でもあるのか少し間を開けて口を開いた。
「個人的な事を最初に・・・・・・・実は夏休みに先生は再婚をする事になりました。」
クラスみんなが驚きの声を挙げると、半分以上の生徒がミレの方を見た。
「このクラスを受け持って暫くした時からお付き合いを始めた女性と婚約が整い、急ではありますが再婚をする事になりました。」
スンスクとセイラが一緒にいる様子を生徒たちの間では、見たと言う噂は沢山出ていた。 当然、噂はあったが堅物で女性には縁がなさそうなスンスクが、ハーフの美しい女性と一緒にいるだけでも騒ぎにはなっていたが、急な再婚で別な事を聞きだがった生徒がいた。
「先生、彼女が妊娠したのですか?」
スンスクはそんな生徒の言葉にも、昔のように顔を赤くして応える事はなく、普通に穏やかな笑顔で応えた。 ミレは、そんな父がセイラを本当に好きになっているから、自分に自信が付いたのだと思うと複雑だった。
「それはないよ。急いだ理由は・・・・・パラン高校の姉妹校に転勤が決まって・・・・・」
例年、転勤の話が出ても受け持っている生徒たちが卒業をするまでは、生徒に負担を掛けないためにも辞令は出ない。 急すぎる結婚に急すぎる辞令に、スンスクの子供のミレはミラが原因ではないかと思った。
突然の転勤に、生徒たちは動揺を隠せない。
きっと転勤の話も急きょ決まった事なのかもしれない。
今朝家を出る時とは違った父の顔色に、ミレは眩暈がしそうだった。
「3つ目・・・・入ってください・・・・」
スンスクがそう言うと、教室のドアが開いた。
まるで、タイミングを見計らって転勤の話をしたのだろう。
「ミラ!」
ひと月ずっと学校に来ていなかったミラが、母親と一緒に現れた。
ミラはもうパラン高校の制服を着ていなく、長かった髪の毛を切って少し染めていた。 ミレは父から話を聞いていた左の手首をチラッと確認をすると、それに気が付いたミラはサッと手首を隠した。 「1年の一学期の数ヶ月だけ一緒に勉強をしていたホン・ミラが、アメリカに移住する事が決まって、今日はその挨拶に来てくれました・・・・さぁ・・・・」
頭をゆっくり下げて挨拶をすると、ミラは今まで知っていた少し恥ずかしそうに話す話し方ではなく、後ろの席まで聞こえるしっかりとした声で話し始めた。
「突然ひと月以上学校を休んでどうしたのだろうと思った人もいたかもしれません。このたび母が結婚をして、休んでいる間にアメリカの学校への入学手続きの為渡米していました。折角入学できたパラン高校からアメリカの学校に行くのは残念ですが、ペク先生が・・・・・・」
何か言いたそうにしていたミラだったが、言う事を止めた。
何が言いたかったのかは判らないが、ミレはミラなら親がアメリカに渡っても自分だけ残ってみんなと一緒にパラン高校を卒業する子だと判っていた。
父の行き成りの転勤の話に、ミラの渡米は何か関係があるような気がした。
0コメント