スンスクの春恋(スンスク) 152
「待って!」
ミラは挨拶を終えるとミレが声を掛けているのに返事もしないで、教室に残っている私物を母と一緒に鞄に詰め込んだ。 パランに入りたいから勉強を頑張った。
他の女の子たちは伝説の二人のように、素敵な人と出会う事を夢見たけど、私は母子家庭で育って、お母さんがパランに入って勉強を頑張っていい大学に入るのが夢だと言っていたから、お母さんのためだけにパラン高校を受験した。
そう言っていたのに、僅か数ヶ月だけパランに在籍して、お母さんが結婚をしてアメリカに行くから一緒に行くと言うの?
夏休みの間に会えなかった友達に、お互いに声を掛けて教室を出て行くと、そこにいるのはミレとミラとミニョンの3人だけになった。
「ねぇ・・・本当にアメリカに行くの?」 「うん・・ごめんね・・・」
「パラン高校に入る為に頑張ったんでしょ?お母さんの為に・・・・・」
ミレと二人にしてあげようと、ミニョンは校門付近で待っているからと言って出て行った。
ミラはミレの方を見ようとしないで、自分のロッカーの中を確認をして、綺麗に汚れをふき取った。
「アメリカに行く理由は、お父さんの所為?」
ミラは何も言わなかった。 ミレもこれを口に出してはいけないと思っていたが、折角仲良くなれて心を許す事が出来る初めての友達だと思っていたミラが、急に離れて行ってしまうのが辛かった。
「先生の事は2番目の事・・・1番の理由は、自分の生い立ちに付いて知ったから。それが手首を切った理由でもある。先生の事は本当に好きだった。お父さんがいたらこんな人がいいなと思うくらいに、すごく好きになったの・・・・・・この事は先生には言わないで・・・」
「言わない・・・」
ミラはミレの方を向いて、少し涙をにじませた目で勇気を出して言葉にした。
「私の生い立ちの事・・・先生から聞いてる?」
「大体・・・・」
「先生から、一度だけキスをされたの。」
「え!」
あの真面目が取り柄のような父が、自分の子供と同じ年の生徒にキスをした? 信じられない言葉ではあるが、ミラが嘘を吐く事をこうして言う事はないと知っている。
「先生は同情だけだとはっきりと私には気が付いていた。ミレのお母さんと同じ名前だから錯覚をしている。お母さんが急に入院をする事になって、寂しくて先生に来て貰った。その時は、奥さんの話を聞いているうちに、先生は遠い所を見ていた・・・・それからしばらくして先生が、綺麗な女の人と一緒にいる所を偶然見かけて・・・・とても楽しそうで幸せそうに見えて。」
流れる涙を拭って、ミラはミレに笑いかけた。
「先生は私にキスをしたのに・・・他の人とあんなに幸せそうにしている。悔しくて悲しくて、そんな時に、お母さんがおじさんと結婚したらアメリカに行く事が確定して、私も迷っていた時に誰かが学校に通報したの。私の家から朝早く先生が出て行くのを見たって。ただお母さんが入院して一人が寂しくて先生に来て貰っただけなのに・・・・・私って、お母さんにとってもいなくてもいい子だし、先生にまで迷惑を掛けてとか、いろいろ考えていたら死んでしまいたくなって。」
同じ年の友達が苦しんでいた時に助けてあげられなかった事を知って、その時の状況を考えるとミレも悲しくなって来た。
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