スンスクの春恋(スンスク) 156
スンスクがセイラと身内だけの結婚式を行う当日、最愛の亡き妻の実家の両親がペク家を訪れた。
孫であるミレやフィマンに会いに時々来たり、ミレやフィマンが泊まりに行ったりしていたが、スンスクが再婚をすると言う事を聞いて挨拶に来たのだった。
「お義母さん、お義父さん、今日はお忙しい所を来てくださいましてありがとうございます。」
「スンスク・・・スンスクさん、このたびはおめでとうございます。ミレとフィマンにもお母さんが出来て・・・・」
成長するにつれて娘に似て来た孫娘を見て、涙ぐんでいるミラの母親。
父親は、何も言わずただ黙っているが、それはスンスクが再婚を決意したことを祝福していた。
「お義母さん、ミレとフィマンの母親はミラだけです。僕はセイラと結婚をしますが、お義母さんとお義父さんは、生涯僕の両親と同じです。これからも、子供たちに会っていただけますか?」
「勿論ですよ。きっと天国のミラも、スンスクさんが再婚を決意してくださって喜んでいると思います。」
ミラが亡くなってからも何度もお見合いの話を持って来てくれた。
招待状を送ったが、自分たちはその席に参列をする立場ではないから、挨拶をして帰ると言って、お祝いの品を置いて帰って行った。
ミラと過ごした僕の部屋は、引越しの荷物がすでに運び出されて、今日式が終わった後に必要な身の回り品だけになっていた。
4歳年上のミラを、僕はとっくにその年齢を通り過ぎて、いつまでも若いままだったミラとは違って、中年の域に入り始めた。
ミラと結婚した時の指輪をはずして、それを昨日墓地に収めて来た。
セイラは『結婚指輪をしたままでもいいのに』と言ってくれたけど、それではセイラが辛いだろう。
いつまでもミラを想い続けていては。
でも、ミラを忘れる事は出来ない。
18歳でミラを好きになってから、今まで誰も好きになれなかったのだから。
「スンスク!もう行かないと・・・セイラは式場に向かったみたいよ。」
「判りました。」
この家に帰って来られるのは、三年後だろう。
おばあちゃんも弱って来ているし、お父さんの心臓の具合もよくない。
お母さんはお父さんが倒れたりしたら、きっと同じように倒れてしまうだろう。
毎日、おばあちゃんの介護と家事を頑張っているけど、お母さんもおばあちゃんがいるから頑張っているのだろうな。
「お母さん・・・・・」
「びっくりした・・・どうしたの?小さな子供みたいに・・・」
スンスクは、ハニの背後から腕を回して抱きしめた。
「お父さん・・・・」
「ん?」
「ちょっとだけ、お父さんの愛しているお母さんを借ります。」
「いいよ・・・少しだけだぞ。」
スンジョも判っていた。 スンスク一人だけが、ずっと自分たちと一緒にこの家で暮らしていたのだから転勤と言う形ではあるが、急に家を出る事になって次にこの家に戻って来るのがいつになるのか判らない事を。
一応、三年と言う条件でも、スンスクはきっと他の学校からの引き抜きがあるかもしれない。
そうなれば、ここに戻って来るのはいつになるのか判らないから、母親であるハニの温もりを忘れないようにしているのだろう。
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