スンスクの春恋(スンスク) 160
ハニが入院をしている部屋からの叫び声のような大きな笑い声で、他の病室の患者が驚いて廊下に出て来た。
その声がハニではない事にスンジョもスンスクも気が付いていたが、他の患者だけじゃなく後輩になる病職員にも言い訳が出来ない。
「何を騒いでいるんだ・・・・」
「アッパが来たから仕事に戻るね。」
大きな声の主は長女で産婦人科医のスンハで、ハニが入院したと聞いて様子を見に来たのだった。
「現役の医師が、他の入院患者が驚く位に大きな声で騒ぐのはよくない。」
「判っているわよ・・・ちょっとオンマをからかっただけなんだから。」
「からかった?」
「入院してすぐに良くなるのなら、きっと知恵熱だったのね、って言っただけよ。」
そうじゃない事は判っていた。
グミが亡くなってから気力がなくなっているハニを心配しているのは、スンジョだけじゃなく子供たち全員だ。
まだ60代。
子供達は親元から独立して家庭を持ち、孫たちからはいつも憧れるおじいちゃんおばあちゃんが二人並んで一緒にいる姿。
「アッパも、オンマの事になると平常心を無くすね。入院するほどじゃなかったのに、スンリに聞いたら搬送されて来た時のアッパの顔は、今にも倒れそうなくらいに青かったって。」
それ以上話をしていたら睨ませそうだからと言って、スンハは自分の仕事場の方に向かって歩き出した。
「スンジョ君?」
「スンスクとセイラが心配して見舞いに来てくれたよ。」
「シシリーは?」
写真でしかまだ見ていない孫に会うのが楽しみだった。
病院に搬送される前と違って、元気もあり熱も下がって来ていた。
スンスクとシシリーを抱いたセイラが入って来ると、ハニは顔を輝かせて二人が近くに来るのを待っていた。
「お義母さん・・・シシリーです。」
「まぁ・・可愛い・・・・人形みたい・・・・裕太と同じ年だから仲良くしてね。」
一人っ子で育ったから、沢山子供が欲しいと言っていたハニ。
その沢山の子供達が親になって、沢山の孫の写真を並べるハニとそれを見ているグミの幸せな顔は、スンジョの体調が悪い時も元気が貰えそうになる。
ハニが笑顔ならスンジョも幸せで、ハニが元気ならスンジョも元気になる。 それは子供たちみんなが知っている事。
「セイラ・・・・」
「はい。」
「スンスクの心にミラがいるのに結婚してくれてありがとう。早くに結婚し病気の妻が亡くなってから苦労をして二人の子供の父親として毎日一生懸命に頑張ってきたスンスクを、生涯の伴侶として決めてくれて本当にうれしい・・・・」
「お義母さん・・・」
「スンスクはスンジョ君と似ていて、自分の気持ちをうまく伝えられないの。でも、スンスクが選んだあなただから、どんな事があっても仲良く暮らしてね。」
母としての想いをハニはセイラに告げると、また腕の中で眠っている小さなシシリーを見て涙を浮かべていた。
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