スンギはミルクティー 2
散々おじいちゃんの店で、家に帰りづらいと言って時間つぶしたのはいいけど、結局は帰らないわけにはいかない。
毎回おじいちゃんは何か言うわけでもなく、黙ってオレの話を聞いてくれるだけだけど、それでも話を聞いてくれるだけで嬉しい。
お父さんにはこんな悩みを相談した事が無い。
本当は話した方がいいのだろうけど、他の家の親とはうちは違うから相談をした事が無い。
「スンギが努力をしないでそれまでだというのなら、それが限界かもしれない。
だけどお父さんはもう少しスンギは出来ると思う。
大学に行きたくなければ行かなくてもいいが、何をしたいのかを考える為に大学に行くのもいい。
「お父さんもスンギと同じ年齢の頃に、お母さんがそう言ってくれたよ。」
簡単にお父さんはそう言うけど・・・・・・
オレはお母さん似だからな・・・頭も悪いし、顔だって男なのに女みたいな顔をしているから。
それにしても、学校から進路希望が出ていないから両親あてに郵便が届いているはずだけど、お父さんもお母さんもどうして何も言わないのだろう。
今は、アフリカにいるスンミ姉さんの子供が生まれるから、出来損ないのオレはどうでもいいのかも。
長い上り坂を歩いていると、家の前に一台の車が停まっていた。
真っ赤な派手な車は、いかにも金持ちが乗りそうな高級車。
「スンリ兄さん、ソラさんとソナと遊びに来ているんだ。」
スンリは月に二回ペク家に愛娘のソナを見せに遊びに来ている。
今日もまた自分の悩みは何も言われない。
楽しく過ごすために来ている兄家族に、嫌な思いをさせる事は出来ない。
スンギは出来るだけ、何もなかったかのように勢いよく玄関のドアを開けた。
「ただいま。」
平気を装って家の中に入ると、ソナに夢中でスンギには誰も気が付かなかった。
ソナが笑いミレが笑い、大人たちがそれを見てまた笑っていた。
「ソラさん、いらっしゃい。」
「あら、スンギ君お帰り。お邪魔しています。」
「ゴメンね、スンギが入って来たのに気が付かなかった。」
「いいよ、楽しい雰囲気の時に帰って来たから。お父さんとスンリ兄さんは?」
「書斎にいるわ。そうそう・・・お父さんがスンギに話があるって。お母さんもすぐに行くから着替えたら書斎に行ってね。」
「うん・・・・・・」
ヤバいな・・・・進路の話だ。
部屋に入ってカバンを机の上に置くと、スンギは鍵の掛った引出しに手を掛けた。
そこには隠していた最悪な点数の返却されたテスト用紙が入っている。
成績の話をする時は、それを持って父の前に行かないといけない。
スンハ・スンリ・スンミ・スンスクにスンギの下の双子たちは一度もそれを持って、両親と成績の話をした事が無かった。
勉強はしている。
しているが、頭に入って行かないだけ。
怒らないお父さんに、「もう!もう!どうしてスンギは!」と、怒るお母さん。
お母さんの頭に顔まで似たオレに、お母さんが怒る事ないだろう。
お母さんよりオレの方が料理の腕は良いのに。
スンリ兄さんがお父さんの書斎にいるのなら、お兄さんも話に加わるんだろうな。
いいのか悪いのかペク家は家族の連携が自慢の家だから。
0コメント