スンギはミルクティー 3
スンギは大きく息を吸ってまた吐いて、父の書斎のドアをノックした。
「入りなさい。」
ドアを開けると、思った通り兄のスンリもそこにいた。
「話って・・・・・・」
普段からあまり子供の勉強の事に口出しはしない父の正面にスンギは座った。
座ると直ぐに見覚えのあるパラン高校の封筒をスッと目の前に差し出された。
「第一進路希望がスンギだけまだ出ていないらしいみたいだけど、お母さんはもうスンギは出したと思っていたみたいだぞ。」
「決めていないんだ。お母さんは大学に行く事を希望しているみたいだけど、どこの大学にしたらいいのかなんて志望大学が選べるほど余裕がある成績ではないから。」
「パランに行けばいいだろう。オレもスンハもスンスクもパランだし、親父もお袋もパランだ。いい
大学だぞ、校風もスンギに合っていると思うし、小学校からパランだから戸惑う事もないだろう?」
「判っているよな、スンギは。学部学科も豊富だし、何を迷って進路が決めれないんだ?」
「やりたい事が分からないんだ。成績だってよくないし勉強も好きじゃない。テストだって高2最後のテストの結果も良くないから、どうせまた7クラスだよ。お兄ちゃんやお姉ちゃんたちみたいに学年トップになんて一度もなった事がない。ペク家の落ちこぼれから。」
親に言われる前に返された解答用紙と成績表を父の前に出した。
成績表は父が、解答用紙はスンリがそれぞれ取ると、無言ですぐにそれを手にした。
無言のこの空間を破ったのは、場違いなほどに明るい口調で書斎に入って来た母の言葉だった。
「お待たせ!ソラちゃんが買って来たプリンを持って来たわ。スンジョ君の分はないからね。」
男三人の様子にもハニは何も気が付かないで、ちゃっかりとスンジョの横に座ると、スンギの成績表を横から覗きこんだ。
「相変らずスンギも頑張っているわね。7クラスで1番・・・・全体で・・・・・・200番・・・・・・これなら推薦でパラン大に行けるわね。」
ハニはハニなりに子供の中で成績が今一つのスンギを励ましたつもりで言った言葉だったが、スンギにはそれは励ましでもなく、落ち込んでいる所に刺された留めの言葉だった。
「お母さんは何もわかっていないよ。オレが中学からどれだけお父さんやお兄ちゃんにお姉ちゃんたちと比べられて、辛い思いをしているのかわかんないだろう!お母さんは最下位グループだったから、オレの成績でもそう能天気に言えるんだ。大学に行ったって、どうせまた比べられるんだよ。≪天才一家の落ちこぼれ≫って!オレが兄妹の中で唯一勝てるのは料理だけだよ。」
「スンギ、今の言い方お母さんに言う言葉じゃないだろう。」
「いいのよ、スンジョ君。私は気にしていないから。ねえ・・・お母さんはスンギよりも何も出来ない事を知っているじゃない。料理だって、スンギの方が上手だし・・でもね、一つだけ出来るものがあればそれでいいんじゃない?スンギが悩んでいても、何も相談に乗ってあげなくてごめんね。お父さんとスンリに悩みを話して、明るいスンギになってね。ソラさんと久しぶりに会えたからお母さんは向こうに行っているね。」
スンギは母に言ってはいけない言葉だと判っていたが、有名な父や兄姉たちに比べられるのならいいが、最近は小学生のスングとスアの優秀な事が高校まで伝わって来て、肩身の狭い思いをしていたストレスから、大好きな母に冷たい言葉を言ってしまったと後悔した。
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