スンギはミルクティー 7
マリーは目鼻立ちがはっきりとした顔立ちで、授業の合間の休憩になると、女子たちがその周りに集まっていた。
どうして韓国に来たのか。
韓国語はどうしてそんなに上手に話せるのか。
転校生はこの時期の高校三年では来る事が無いから珍しいだけ。
別に興味がその転校生にあるわけでもないからと、スンリは生物クラブの菜園に行くために教室を出た。
春になれば虫も姿を現し、草の成長も早い。
1日に一度は菜園に来て、草取り水撒きをして葉に付いている虫を取らなければいけない。
いつも通り草を取っていると、自分の横に座って同じ様に草取りをする影が視野に入った。
この時間の担当はスンリ一人のはず。
その陰の人物は、スンリと同じように草を取り始めた。
「おい、それは法蓮草だ。野菜まで抜くなよ。」
「ソ―リー。」
ソ―リー? 法蓮草の新芽を取ろうとしていたのは、転校生のマリーだった。
「何だ、転校生か。法蓮草が珍しいのか?」
「ううん、ねぇ、私の事覚えていない?」
「覚えていない。オレには外人の知り合いはいないから。」
外人の知り合いはいない事はない。 ただ一人知っているのはジュングおじさんの奥さん。
おじさんの奥さんは韓国人の母とイギリス人の父のハーフだと聞いた事があった。
おじさんは、暫く韓国で仕事をしていたけどイギリスに渡って、たまに帰って来ていたな。
スンハ姉さんと同じ年の子供とスンスク兄さんと同じ年の子供と、確かオレと同い年の一人娘がいたよな。
何年か前の学校の夏休みに、おじさんとククスのじいちゃんの店に来た事があったっけ。
「甘いミルクティーが好きなスンギ。」
「おい、余計な事を言うなよ。甘いミルクティーが好きなのは、学校では秘密なんだよ。」
「そうなの・・・・・・パパの送った紅茶は何時もスンギが使うって聞いたけど。私もスンギの作った甘いミルクティーが飲みたいから、ククスのお店に行ってもいい?」
馴れ馴れしいこの転校生を最初は無視しようとしていたが、とても無視するどころか纏わりつくように寄って来た。
「オレさ、女の子と草取りをするために生物クラブに在籍している訳じゃないぞ。ほらじゃまだ、どけよ。」
忙しそうに片付け物をしているスンギが、生意気な事を言っている フと瞬間的に、昔会った自分と同じ年の女の子と転校生のマリーが似ている事に気が付いた。
「マリーって・・・・・ポンだっけ。」
「そうよ、ポン・マリーよ。父はポン・ジュングで母はクリスティーナ・ロビンスよ。小学生の時に会った事があるじゃないの。忘れたの?」
あの時は人形のように可愛い女の子だったのに、今のマリーはうるさそうな・・・・・ジュングおじさんとよく似た感じの女の子だった。
勿論、顔はおじさんには似ていなかったけど。
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