スンギはミルクティー 10
まだ幼い頃だったとはいえ、女の子と一緒に風呂に入った写真を撮ったおばあちゃんに怒鳴りたくても怒鳴る事が出来ない。
おばあちゃんが喜んで撮っている風でもなく、どちらかと言うと悔しいがオレとマリーが撮ってとせがんでいるように見える。
カメラ目線で、二人揃って満面の笑顔でVサイン。
「知ってる?スンギのお尻のホッペに黒子(ほくろ)があって、この写真を撮った後にゴミだから取ってあげると言ってバリバリとひっかいて泣かせた事覚えている?」
「覚えているわけないだろう。」
嘘だ。 思い出したよ。 あの頃もマリーはオレを追い掛け回していたっけ。
「傷跡・・・・・・残っている。」
「見せて!」
いたずらっ子のような目でスンギの顔を覗きこむ、明るい茶色の瞳は琥珀のようにキラキラとしていた。
「マリーや、あの頃みたいにスンギの尻はかわいくないぞ。」
「じいちゃん!」
「ハハハハ・・・・・・」
ギドンの楽しみの一つに、孫のスンギをからかう事。
立ち上がって不貞腐れているスンギを見て、ギドンはまた大きな声で笑いながら、厨房の奥に入って行った。
フワッと何かが触れた感覚で振り返ると、マリーがスンギのお尻を見ていた。
「な・・・・何したんだよ。」
「くすぐったかった?」
「尻を触るなよ、女のくせに!変態か?お前は。」
「変態かもね。私、スンギに会いたくてパランに入ったんだもの。この写真の頃からずっとスンギの事が好きだったのよ。」
この写真の頃って、わずか4~5才だろ?
大体がこんな小さな頃に好きだとかと思っても、そんな事を10年以上も思ってきたこのポン・マリーがオレは苦手だ。
「ほら、ミルクティーと練乳だ。」
ギドンはスンギの目の前にトレイごと置いた。
「こっちはマリーのだよ。」
スンギの目の前に置いた物と同じ物を、ギドンはマリーの前に置いた。
「あ~懐かしい、いつも私が飲んでいたのをスンギが欲しがっていたわよね。」
オレが欲しがっていた?
甘い物を飲むと頭が良くなるってお母さんが言っていたと思ったのは間違いか?
子供の頃の記憶は思い違いの事もある。
あの時甘いミルクティーを出してくれたのはお母さんではなかったのかもしれない。
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