スンギはミルクティー 11
もうじいちゃんの店には行かないからな。
あんなガキの時の写真を思い出したようにひっぱり出して来て。
オレは写真に写るのが嫌いだ。
7人の兄妹の中でオレだけが一番沢山写されている。
「だってぇ~スンギは女の子みたいにかわいい顔をしているし、大好きなハニちゃんとよく似ているもの。」
小学校の低学年の頃までは、お父さん子供の頃の顔とよく似た顔をしていた。
小学校高学年になる頃から、成長と共にお母さんと似た顔になった。
その時はそれでよかった。
お父さんの顔に似たまま今になっていたら、顔は似ているのに頭の中身が似てない。
そう言われる事が判っていた。
なんでこんなにイライラするんだ?
あのマリーのせいだ。
忘れたい過去のあの写真・・・・・・ ただ二人で一緒に入浴していただけじゃなくて、女の子みたいに髪の毛を長くしていた頃。
まだスングもスアも生まれていなくて、一番下の子供だったから兄妹たちのお下がりを着せられていた。
いや・・・違う・・・・お父さんが僕が女の子っぽい服を着ていた時、おばあちゃんとお母さんに怒鳴っていた。
「オレの二の舞にさせるのか!」
何の事か判らなくて、お母さんに聞いた事があった。
「秘密・・・・・言わない方がスンギの為でもあるから。」
お母さんは無理だ。
お父さんの為なら、たとえどんなに頼んでもお父さんが嫌がる事は言わない人だったから。
それならおばあちゃん・・と、そう思ったけどおばあちゃんに話してしまったら、お父さんやお母さんに、何を聞いたのかは知られてしまう。
「ただいまぁ~、畑に行って来るから。」
どうせただいまと言って誰かがいても、オレの事なんて気にしていない。
スンギは玄関の開けたドアをまたすぐに閉めてウッドテラスの方に向かった。
毎日欠かさずその場所にスンギは行っていた。
小さな畑に綺麗に植えられた野菜たち。
その野菜たちの世話をしている時は、スンギにとって一番心落ち着く時間だった。
「なぁ・・・・・・・子供の時の嫌な写真って、そんな嫌な思い出でも大切にしまっておくものだろうか。嫌なのはオレだけで、向こうはむしろその写真を大切にしているんだ。あんな過去が無かったらどんなに再会した事が喜べたかもしれないのに。」
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