スンギはミルクティー 12
「どうしてあんな写真を・・・・」
思い出しても腹が立つくらいにあの頃の写真は嫌いだ。
「辛いか?」
誰もいないと思っていたウッドテラスで、後ろから声を掛けられてスンギは驚いて尻餅を付いた。
その拍子にせっかく出て来た新芽を見事に根元から倒してしまった。
その声の主はスンギの腕を引っ張ると、身体を起こした。
「お父さん・・・・・・」
「お前も写真に苦労するのか。」
「お前もって・・・・」
「お父さんも、おばあちゃんが写した写真で、お母さんに弱みとして脅されたよ。消し去りたい過去の写真でも、お前のはお父さんよりましだよ。」
どんな写真かは聞かなくても知っている。 時々、お母さんがお父さんに見せては何か取引をしていたから。
「女の子の格好をしていて・・・・・・楽しかった?」
「楽しいとかは、やっていた頃は判らなかったな。女の子の服を着て写真を取っているおばあちゃんを見て、楽しそうに笑っているからやっていたようなものだったからな。幼稚園に入るまで、男だとか女だとか気にした事が無かったし、可愛いって言われるのが普通だと思っていたからな。」
そうだよな。 あの写真の中のオレは、嫌だという顔をしている風にも見えないし、どちらかと言うとマリーと楽しそうにしている様子だった。
「マリーは一人で来たんだろ。」
「知っているの?来た事は。」
「さっきククスのおじいちゃんからマリーが来た事をお母さんに電話があったみたいだ。」
何で店の二階に住む事になったのだろう。
オレん家に来たら、部屋はスンミ姉さんとスンハ姉さんが結婚したから、ふたつ空いているのに。
まっ、スンハ姉さんはたまに帰って来て寝ているけど、スンミ姉さんはアフリカからまだ帰って来ないから空いている。
「で・・・・おばあちゃんが、スンミの部屋が空いているからどうだって。」
「どうだってって・・・・・何でオレに聞くの?それに、ククスのおじいちゃんの店の二階に住むのならそれでいいのに。」
「店の上は、急に決まった帰国だから、部屋を見つけるまでのことだけど、一人で慣れない土地で住むのにおじさんがおじいちゃんに頼んだらしい。」
「フーン。」
「聞いたのは、おばあちゃんがスンミの部屋が空いているから、マリーにどうかって。」
じょ・・・冗談だろ。
あのストーカーの様に人前でも離れないマリーがこの家に来たら、風呂やトイレもオチオチと入ってられないじゃないか。
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