スンギはミルクティー 15
「ねぇ~練乳入れてもいい?」
向かい側のオレの今の彼女のミンに聞かれている事よりも、後ろのカップルの方がなぜか気になって振り返った。
あのマリ―と同じ名前の彼女の向かい側の男は、ブランド尽くしの格好のニヤケた男。
「あぁ~」
気のない返事をしてオレは何が気になるんだ。
マリーなんて在り来たりな名前なのに。
「スンギったらぁ~ミルクティーに練乳を入れるね。」
スンギ?ミルクティーに練乳? 私は今まで後ろにいたカップルのことなど気にも留めていなかった。
スンギと会わなくなってからトキメキなんて感じなかったけど、それなりに優しくしてくれたから付き合って欲しいと言われて、スンギと気まずくなってなんだか心がポッカリと空いちゃった感じがして、軽い感じで告白されてほんの軽い感じで付き合い始めて・・・・・
あれから何年も経ったのに、スンギと言う名前と練乳と聞くだけで胸がドキンとしてくる。
もう会っていないし、ギドンおじさんの店も出て時間が経っているのに、おかしいよね・・・・・・
「マリー?」
「スンギったらぁ~。ペク・スンギ!」
マリーはプロポーズをしてくれたチョ・ヨンダルに応えないで『ペク・スンギ』と名前が聞こえた方を振り向いた。
「マ・・・・マリー・・・・」
「スンギ・・・だったの?」
「知り合いかマリー。」
やっぱりマリーだった。
知らない間に髪まで長くして、綺麗に化粧をして、最後に会った時よりもすごく綺麗になっていた。
「久しぶりだな・・・・・・」
「本当・・・ね。あっ・・・ヨンダル、私が前に部屋を借りていたお店のおじさんの孫。」
部屋を借りていたお店のおじさんの孫・・・・・ね・・・・
ヨンダルは立ち上がってスンギの方に歩いて行きた。
「マリーが韓国に来た時、色々と面倒を見てくれていたんだってね。」
「別に・・・・面倒を見させられただけだよ、お袋に・・・・・・悪いけどどいてくれる?オレ達帰るところだから。」
「スンギ、帰るって・・・まだ来たばかりで、私のケーキがまだ来ていないわ。」
「いいよ、他で買えば。行かないからオレ一人で帰るから。」
会いたくなかった。
マリーと気まずくなってから一度も会おうともしなかったし会えなかった。
「彼となんかあったの?来てすぐに帰るって、そんなに忙しそうにも見えなかったけどね。」
「私ね・・・・・嫌われてるみたいだから・・・・・・」
「嫌われてる?」
ヨンダルには言えない。
あれは大学に入ってからしばらくたった時だった。
店の留守番をしながら、スンギが書いているノートを見ているうちに起きた事。
料理レシピを書くスンギはとてもカッコよくて、レシピに書き入れた絵は、女の子みたいに綺麗に色まで塗っているから見るのが好きだった。
あの後、スンギは私に謝った。
謝ってほしくなかったのに謝った。
0コメント